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ベーシックインカム支持者が多いのはなぜ?

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*この記事は2017年12月に掲載されたものです。

10月に行われた解散総選挙において、希望の党が、突然ベーシックインカムを公約として打ち出した。結果はご承知の通りで、非現実的であるとの声が多かったようだ。

確かに、この制度を導入するには莫大な財源が必要であり、今の日本においてはあまり現実的な話とはいえない(まったく不可能ではないが)。だが、お金持ちの中には、(実際に導入するのかは別にして)ベーシックインカムの概念そのものについては肯定的な立場の人が多い。この制度は、怠けた人が得する制度ともいえるが、高所得者はなぜこの制度に賛同するのだろうか。

お金持ちの人はなぜかベーシックインカムに肯定的

ベーシックインカムは、全国民が最低限の生活を送るために必要な金額を無条件で給付するという制度である。

ベーシックインカムでは、最低限度の現金給付を行う代わりに、それ以外の社会福祉は原則として実施しない。全員に無条件でお金が給付されるので、原理的に不正受給という問題は発生せず、この範囲で生活できない人に対するケアは行われないので、過度に福祉に依存する人もいなくなるという仕組みである。

この制度の最大のポイントは、無条件で全国民が給付の対象になるという部分だろう。豊かなのか、貧乏なのか、働いているのか、遊んでいるのかなど、本人をとりまく状況に関わらず、無条件で給付を受けることができる。その代わり、既存の福祉はカットされ、その範囲の中ですべてを自己責任で処理しなければならない。

この制度に対する一般的な反応は様々だが、不思議なことにお金持ちの人ほど、この制度に対して肯定的というケースが多い。実際、高所得者でベーシックインカムの導入を主張する人は少なくないのだ。

ベーシック・インカムは、努力した人もしない人も、同じようにお金がもらえてしまうので、乱暴に言ってしまえば、怠け者ほど得をする仕組みといってよい。経済的に成功した人には努力家が多いので、この制度にはあまり賛成しないように思えるが、実際はその逆となっている。

それはなぜだろうか?

おそらく成功した人は、基本的に自分が上昇する事に全力を傾ける傾向が強く、ラクして少額のお金をもらえる人には興味がないことが理由と考えられる。つまりお金を稼げなかった人に対して、特別な感情を抱かない可能性が高いのだ。

一方、経済的にそれほど豊かでない人の多くは、他人との比較に血道を上げてしまう傾向が顕著である。このため、少額であったとしても、あまり努力をせずにお金をもらえる人を見ると、許せなくなってしまうのかもしれない。

加谷珪一

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