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ベーシックインカム支持者が多いのはなぜ?

仕事を楽しまないとお金持ちにはなりにくい?

これに加えて、お金持ちの人は、物事をできるだけシンプルに、そして合理的に考える傾向が強い。最低限の給付を全員に行い、その範囲でうまくやれなかった人については基本的に面倒を見ないという考え方は、実際にそれが導入できるのかは別問題として、社会のルールとしてはとてもシンプルである。

お金持ちの人は、ベーシック・インカムについて「面倒なことがなくスッキリしていてよい」と考えているのかもしれない。

冒頭にも説明したように、日本でベーシック・インカムを導入することは財政上あまり現実的ではないのだが、近い将来、状況が大きく変わる可能性があることも否定できない。それはシェアリング・エコノミーや人工知能(AI)の台頭である。

人工知能やロボットが普及すると、今、存在する仕事の何割かは確実に機械に置き換わってしまう。また、ウーバーやAirbnbに代表されるシェアリング・エコノミーが拡大すると、社会全体で必要なリソースが大幅に減ってくる。結果的に人は今ほど労働に従事しなくても、同じ経済水準を維持できる可能性が高まってくるのだ。

そうなってくると労働はもはや生活するためのものではなく、自分の楽しみのためという感覚が一般的になる可能性もある。だが、こうした感覚は、実はお金持ちの人たちの仕事の感覚に近い。

お金持ちの中で嫌々自分の仕事に取り組んでいる人はほとんどいない。たいていが仕事を楽しんでいるか、仕事に対して何らかの使命を感じているのだが、こうした考え方が、実は大きな成果に結びついている。お金持ちの人がベーシックインカムに無意識的に賛同するのは、こうした価値観とも無関係ではないだろう。

一連の話を整理すると、やはりお金持ちになるためには、仕事に対して前向きになる必要がありそうだ。自分が楽しめたり、使命感を持って取り組める仕事でなければ、大きな成果を上げることは難しい。逆に言えば、こうした仕事に巡り会うまでは、いろいろなことにチャレンジするのも悪くないということになる。

過度に仕事を変えることはよくないが、成功者の中には、何度も仕事を変えた経験がある人が多い。どんな価値観で仕事に取り組むのかというのは、お金持ちになるための重要なポイントといえそうだ。

加谷 珪一 (かや けいいち)

経済評論家。東北大学卒業後、投資ファンド運用会社などで企業評価や投資業務に従事。その後、コンサルティング会社を設立し代表に就任。マネーや経済に関するコラムなどの執筆を行う一方で、億単位の資産を運用する個人投資家の顔も持つ。著書「お金持ちの教科書」(阪急コミュニケーションズ)ほか多数。

連載コラム

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