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本格的な競争の場合、成功できるかどうかは親に依存しない

kaya202110

生まれた環境や親は選べないという意味の「親ガチャ」という言葉が話題となっている。確かに身体能力や学力など一部の能力については遺伝の影響が大きいことが知られているが、投資やビジネスで成功する才能については、遺伝との関連性は低い。本コラムを読んでいる成功者の皆さんも同じような感想を持っているのではないだろうか。

成功しやすい行動パターンとは

一般的にスポーツや学校の勉強など、単純な身体能力や知能については遺伝的要因が大きいとされる。だがビジネスでの成功に不可欠とされる積極性やコミュニケーション能力は遺伝では形成されにくい。一連の能力は環境要因が大きいと言われるが、良い環境を与えれば良い結果が得られるとは限らず、逆の効果も見られる。学術的な研究では、そこまでしか分かっておらず、どうすれば成功しやすい人間が育つのかまでは分かっていないのだ。

子どもの頃の経験が、成功に対してプラスの影響を与える可能性があることは経験則としてよく知られている。筆者も多くの事例を目にしているが、実業家の子どもはそうではない家庭の子どもと比べて、成功しやすい振る舞いを身につけている。

このコラムで何度か言及した通り、ビジネスや投資で成功する人には、時間の感覚が鋭敏、他人を理解する能力が高い、支出の基準が明確、判断が合理的など、共通する行動・思考パターンがある。成功者で時間にルーズな人は少数派であり、中には遊んでいる時間すらお金に換算する人もいる。

他人を理解できなければ交渉で成功するのは不可能だし、人をうまく使いこなせない。多くの人が誤解しているが、「他人を理解すること」と「他人に共感すること」には天と地ほどの違いがある。ビジネスで重要なのは共感することではなく理解することである。相手を理解できれば、仮に共感していなくも相手が何を求めているのがハッキリ分かるので物事はうまく進む。共感というのはあくまで情緒なので、自分が共感しているだけで、相手と共通認識を持っている保証はない。

お金の支払いには、単純に欲求を満たすための支出と、将来、お金を生み出すための原資となる支出の2種類がある。経済学的には前者は消費、後者は投資ということになり、成功者は支出をできるだけ投資に近づけようとする。同じ遊びへの支出でも、将来の稼ぎにつながるのかという観点で選ぶのだ。

成功者は、すでに成功した年配者をよく観察したり、自身が試行錯誤を繰り返す中でこうした行動パターンを身に付けていく。実業家の家庭に育った子どもは、親の姿を毎日見ることで幼い時から自然と学べる環境にある。

一方で、こうした環境が逆の効果をもたらし、親への反発からビジネスを忌避してしまう子どももいるので、良好な環境が必ずしもよい結果を導き出すとは限らない。少なくともビジネスでの成功が後天的な要因である可能性は高いだろう。

加谷珪一

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