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The Style Concierge

なぜワインにハマるのか

お金持ちの中でワインが好きという人はかなり多い。お酒なので人によっていろいろ好みはあるはずなのに、お金持ちは決まってワイン好きだ。もちろん、ワインはブランド物の時計などと同様、お金持ちの「記号」として作用する面があるのは事実だが、それにしてもなぜ、ワインはここまでお金持ちを惹きつけるのだろうか。

ワインと日本の和歌は似ている

ワインがお金持ちにとって魅力的に映るのは、ワインという飲み物には、付加価値を高めるための巧妙な仕掛けがしてあり、これがうまく作用しているからだ。

最近は新興国の経済成長なども影響し、ワイン産業は世界各地に広がっている。だが、ワインが持つ価値を高めるための基本的な枠組みをゼロから構築したのはフランスであり、今でもフランス・ワインは、この世界のスダンダードとなっている。

フランス・ワインの最大の特徴は、どの場所で、どのように作ったワインがどのくらい高級なのか、というルールが厳密に体系立てられている点にある。味についても、どのような味を高級とするのかがあらかじめ決められており、個人の好き嫌いで勝手に表現ができないような仕組みになっている。これが絶大な効果を発揮しているのだ。

よくB級グルメの世界などでは、ラーメンの味などをめぐって大激論になることがある。味の好みは人によって様々なので、自分にとっては美味しいと思えても、他人にとっては美味しくないというのはよくある話だ。味に関する議論というものは、極論すると、それぞれが好き勝手意見を言っているだけなので、理論上、議論に勝負が付くことはない。最後は「アイツは味が分かっていない」でおしまいである。

ところがフランス・ワインの場合には、議論が発散しないための仕組みがあらかじめ構築されており、そのルールにしたがって議論することが求められる。したがって、このルールを覚えないことには、ワインの世界に足を踏み入れることはできない。

こうした世界は、日本の和歌をイメージしてもらうと分かりやすいだろう。和歌は歌なので好き勝手に詠めば良いのかというとそうはいかない。歌を詠むためには、厳密なルールをあらかじめ勉強しておく必要があり、それが分かっていないと、この世界に入れないような仕組みになっている。このような一種、排他的でな仕組みが存在していることが、和歌の価値を高めているという側面は否定できない。

フランス・ワインも同じで、こうした少々、嫌らしい仕組みがあることで、ワインの価値が維持されるようになっている。フランス人は自国のワインの価値が落ちないよう、こうした嫌らしい仕組みを作り、ワインの価値を高く保とうとしたと考えられる。

加谷珪一

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