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これからの資産形成には
ファミリービジネスの感覚が必要 4/4

稼ぐ能力とは上手に自己主張する能力

重要なのは、お金に関する細かい知識を覚えさせることではなく、子供に稼ぐ能力を身につけさせることである。稼ぐ能力というものを突き詰めていくと、それはよい意味で自己主張する能力に収れんされていく。

日本は「和」が優先される社会ですが、それは必ずしも相手に対する思いやりからそうなっているわけではない。誰かがが抜け駆けして大きな利益を得ないよう、相互監視するという役割も果たしている。つまり支配しているのは「嫉み」の感情である。
 
皆が同じようなライフスタイルだった昭和の時代まではそれでも大きな問題は起きなかったが、現代は価値観の多様化が急速に進んでいる。周囲の空気ばかり読んでいては、経済的・社会的に成功することは困難である。相手のことは尊重しつつも、自らの意見をしっかり主張できる人物にならなければ、稼ぐ力は身に付かないだろう。

自己主張とわがままは混同されがちですが、両者はまったく異なる概念である。わがままは、単に自分の欲望を追求しているだけなので極めて感情的な行動といえる。だが自己主張は、基礎となる考え方が存在し、それに基づいて、相手との違いを説明するという行為なので、こちらは論理的な行動ということになる。
 
わがままを通す場合には、相手が何を言っているのか理解する必要はないが、正しく自己主張するためには、相手が何を言っているのか、自分はどう思っているのかについて、理解する必要がある。矛盾しているようだが、自己主張と相手の話をじっくり聞くという行為は実は共存するものなのだ。

こうした感覚を子供に身につけさせていれば、自然と経済的な感覚を身につけることができる。具体的なビジネスの話をするのはそれからでも決して遅くはない。

加谷 珪一 (かや けいいち)

経済評論家。東北大学卒業後、投資ファンド運用会社などで企業評価や投資業務に従事。その後、コンサルティング会社を設立し代表に就任。マネーや経済に関するコラムなどの執筆を行う一方で、億単位の資産を運用する個人投資家の顔も持つ。著書「お金持ちの教科書」(阪急コミュニケーションズ)ほか多数。

連載コラム

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加谷珪一

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