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人より半歩先に行く

多くのビジネスや投資には適齢期がある

板倉氏が広告を配信することによってインターネットに無料で接続できる画期的なサービスを開発したのは1996年のことであった。当時、同社のサービスは大変な話題となったが、時期が早すぎ、思うように利用者を集められなかった。同社は残念ながら1997年に倒産してしまう。

国内でインターネットが大ブームになるのはその直後である。同社の特許はインターQ(現在のGMO)が買収し、同社は無料インターネット事業で急成長し、株式を上場した。

少し時代は遡るが、かつてヤオハンというスーパーがあった。創業者の長男であったオーナーの和田一夫氏は1980年代に、これからは中国の時代になると確信し、香港市場に上場するなど積極的なアジア展開を進めた。だが無理な拡大が裏目に出て1996年に経営危機が表面化、翌年には倒産してしまう。

和田氏は現地化の重要性を認識しており、自らも香港に移住するなど本格的なものであったが、時代が早すぎた。あと10年会社を持たせることができれば、状況は違っていたかもしれない。日本をあげての中国ブームがやってくるのはその後のことである。

早すぎると失敗するとはいえ、逆に遅すぎてもダメだ。前述のハイパーネットは97年に倒産しているが、楽天が創業したのは同じく97年、サイバーエージェントの創業は98年となっており、後にネットビジネスで大成功した会社は皆この時期に設立されている。

その後ネットバブルといわれた2000年前後に設立された会社は、絶対数は多いものの、楽天やサイバーエージェントほどの成功を収めたところは少ない。これは歴史の後知恵に過ぎないかもしれないが、ネット第一世代の企業は97年前後が適齢期で、それよりも前でも後でもダメだったということになる。

現在ではインターネットは生活の一部になり、ブログを収益化してメシを食う、いるいわゆるプロ・ブロガーやアフィリエイターと呼ばれる人は当たり前の存在となった。

だが、その中でも大きな収益を得ることができているのは、2000年代後半にサービスを本格化させた人たちである。それより後に市場に参入した人は相対的にかなり不利な状況である。やはりここにも適齢期というものが存在している。
 
お金儲けに最適なタイミングは人より半歩先である。皆がその存在を知り始めているが「そんなもの大丈夫なの?」と多くの人が疑問視するくらいがちょうどいいタイミングなのだが、これを知るのは意外と難しい。

加谷 珪一 (かや けいいち)

経済評論家。東北大学卒業後、投資ファンド運用会社などで企業評価や投資業務に従事。その後、コンサルティング会社を設立し代表に就任。マネーや経済に関するコラムなどの執筆を行う一方で、億単位の資産を運用する個人投資家の顔も持つ。著書「お金持ちの教科書」(阪急コミュニケーションズ)ほか多数。

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