ENRICH(エンリッチ)

The Style Concierge

これからの時代にお金持ちになる人

自分でこなせる能力が重要に

実業家に求められるスキルも変化しつつある。経営学の格言に「有能な弁護士はタイピストを雇う」というものがある。自分で出来ることであっても、それは他人に任せ、付加価値の高い仕事に集中した方が儲かるという話である。だが最近ではこの前提が崩れてきている。

昔はパソコンがなかったので、正式な文書はタイプライターで打っていたのだが、これが結構な手間と時間になってしまう。いくらタイプを打つのが得意な弁護士でも、お金を払ってタイピストを雇い、自分は付加価値の高い弁護士業務に集中して、たくさん顧客を獲得した方が得策という意味である。

確かにその通りで、これまでの社会は、徹底的に分業が進められてきた。メインとなる仕事以外は、すべて人に任せ、自分の得意とする分野に集中した方が儲かることが多かったのである。お金持ちの中には、ほとんどの仕事を人に任せ、自分は考えることだけに集中するという人もいる。

だが、ネットが社会の基本インフラとなってからは状況が大きく変わってきている。ITツールの進化とクラウドなどを使ったネット・サービスの充実で、自分の時間を少し犠牲にすれば、大抵の業務が自分でこなせるようになってきたのである。

数年もすれば人工知能の質が劇的に向上し、作成したい文書の骨格はITツールが作ってしまうということが当たり前になるだろう。経理や税務なども同じである。かなりの部分が自動化され、後は確認するだけとう形になるのは時間の問題だ。

そうなってくると、ますます、自分の周りに人を配置する必要がなくなってくる。

小規模なビジネスを運営し、年間3000万円の売上高があったとしよう。これまでは、ビジネスとしてこれを継続するために、3人ほど従業員を雇わなければならなかったとすると、それだけで売上げの半分くらいがコストで吹き飛んでしまう。最終的に自分の給料は800万円くらいになってしまうかもしれない。

顧客対応や経理、備品の監理、スケジュール管理など、細かい仕事をこなす人がいないと会社が回らないので、これは必須のコストと思われていた。しかし、ネット・サービスのフル活用でこの経費が浮くとしたらどうだろうか?3000万円の収益は、そのまま自分の収入となる。

800万円と3000万円では天と地ほどの差である。こうした形で年収3000万円を手にするお金持ちは今後、確実に増えてくるだろう。


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加谷 珪一 (かや けいいち)

経済評論家。東北大学卒業後、投資ファンド運用会社などで企業評価や投資業務に従事。その後、コンサルティング会社を設立し代表に就任。マネーや経済に関するコラムなどの執筆を行う一方で、億単位の資産を運用する個人投資家の顔も持つ。著書「お金持ちの教科書」(阪急コミュニケーションズ)ほか多数。

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