ENRICH(エンリッチ)

The Style Concierge

これからの時代にお金持ちになる人

パクリは悪いことなのか

何度も成功できる人の特徴として、他のビジネスモデルの模倣が上手いという点も無視できない。ビジネスが小規模になれば、複数のチャネルでいくつかの事業が併存できる可能性が見えてくる。規模がそれほど大きくなくてもよいのであれば、柳の下にはドジョウが数匹存在するのである。つまり、他社のビジネスと類似のものを自社に取り込んでいくという工夫が必要となる。

他人の真似をすることはよいことではない。これは完全な正論なので、正面から否定できる人はいないだろう。だが、他社の真似をする、つまり他社のビジネスをパクることは、絶対にいけないことだと思い込んでいるようでは、新しい事業を連続して成功させることは難しいかもしれない。非常に逆説的な話だが、他のビジネスをうまくパクれる人は、新しい事業を創造することも得意なのである。

「自分が思いついたことは、すでに10人が思いついていると考えよ」

起業の世界にはこんなことわざがある。どんなに優秀な起業家でも、一人で考えつくことなど、たかが知れている。自分では革命的なアイデアだと思っても、同じようなことを考えているライバルはいくらでも存在するのだという意味である。

こんなことわざもある。「商売の仕組みなど1000年前から何も変わっていない」

技術の発達でいろいろな進歩はあるものの、ビジネスの基本は今も昔も変わらないという意味である。つまり、本当の意味で革命的な事業など、実際には存在しないのである。

革命的と言われたグーグルの検索エンジンの仕組みも、すでに存在しているいくつかのモデルの組み合わせたものである。多くの人から参照される情報は重要度が高いという考え方や、ネット上に広告を効果的に表示する技術は同社が登場する以前から存在していた。

グーグルの卓越しているところは、従来はあまり関係ないと思われていた複数の技術やビジネス・モデルをうまく組み合わせたことであり、これこそが同社の重要な評価ポイントである。同社が単一の、革命的な発明によってこれだけの成長を成し遂げたと考えるのは、逆に同社のポテンシャルの高さを軽視しているとも言える。

本当に優秀なビジネス・パーソンは、他社の優れたビジネス・モデルを模倣し、自分のビジネスに取り込むことができまる。パクリと言ってしまえばそれまでだが、これが実現できるということは、他社のビジネス・モデルのどこが優れているのかについて、しっかりと理解できているということを意味している。

他社のビジネス・モデルの優れた点を理解できるということは、本当に画期的なアイデアに遭遇した時に、その本質を理解し、自社のビジネスに応用できるということでもある。成功させる確率を上げようと思ったら、他人の良質なビジネス・モデルは積極的に自分に取り込んでいった方がよい。

加谷珪一

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