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外国のエアラインが日本から撤退するのはナゼ?

成田空港

航空行政の影響を指摘する声も

日本から外国の航空会社が撤退していくのは、基本的には需要がなくなっているからなのだが、理由はそれだけではなさそうである。一部の関係者からは、「成田縛り」という行政指導の影響が大きいと指摘する声も出ている。

成田縛りとは、国土交通省が成田空港に発着枠を持つ航空会社に対して、羽田空港に国際線を新しく就航させる場合には、成田発着便を残すよう求める行政指導のことを指す。これは法的根拠のないものだが、航空会社にとっては、実質的に政府からの命令と解釈されている。

そのようなことをする理由は、航空会社に対して自由に路線の申請を許してしまうと、便利な羽田空港に路線が集中してしまい、成田空港を存続させることができなくなってしまうからである。

航空会社にしてみると、採算性の悪い成田便を残したまま羽田便を新設しても、日本路線全体としての利益は薄くなってしまう。その結果、一部の航空会社は、日本路線そのものから撤退した方が得策と判断することになる。

もっともヴァージン航空の撤退は、同社がデルタ航空のグループに入った影響が大きいと考えられる。デルタとの共同運航を進めて効率化を図る方針なのだろう。

しかし、ここにも、日本路線の需要低迷とガラパゴス化した航空行政の影響は及んできている。

デルタ航空は、日本発着が多かったノースウェスト航空を吸収しており、もともと日本路線に強みを持っている。需要が減少しつつある日本路線をグループ内で複数運営するよりも、より利益の大きい欧州路線などに機材を振り向けた方が得策と判断した可能性は高い。

諸外国では、市場の拡大に伴いLCC(格安航空会社)が普及すると同時に、安価にビジネスジェットを利用できるサービスも急拡大している。飛行機の利用はますます身近なものとなっているのだが、残念ながら、今の日本では、どちらも拡大する兆しは見られない。

加谷 珪一 (かや けいいち)

経済評論家。東北大学卒業後、投資ファンド運用会社などで企業評価や投資業務に従事。その後、コンサルティング会社を設立し代表に就任。マネーや経済に関するコラムなどの執筆を行う一方で、億単位の資産を運用する個人投資家の顔も持つ。著書「お金持ちの教科書」(阪急コミュニケーションズ)ほか多数。

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加谷珪一

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