ENRICH(エンリッチ)

The Style Concierge

ベビ連れOKの高級フレンチ急増が意味すること

イオンモールに高級フレンチが並ぶ日

エンリッチ 加谷氏

かつて米国の繁栄は、厚みのある中間層が支えていた。中間層の象徴ともいえる施設は、郊外にある大型のショッピング・モールである。1970年代から大型モールが全米のあちこちに建設され、中間層消費の象徴的な存在となっていた。

だが、近年ではショッピング・モールの絶対数はほとんど増えていない。米国は日本と異なり人口がどんどん増加しているにもかかわらずである。

その理由は、社会のグローバル化が進み、いわゆる中間層が消滅してしまったからである。所得が減ってしまった人は、頻繁にモールにいくことができなくなった。所得を維持した人も以前と同じに消費をするとは限らない。中には、すべてAmazonで買い物を済ませてしまうなど消費生活は多様化している。

では、こうした中間層向けモールはどのようにして生き残ろうとしているのだろうか。それはちょっとした高級路線である。利便性のよい場所にある小規模なモールは、比較的単価の高いスパやレストランをテナントにし、可処分所得が高めの顧客層を狙おうとしている。だがこうしたモールに入る高級レストランは、階級的な雰囲気を残したかつてのそれではない。

この動きは今後、日本でも加速するだろう。日本の場合、人口減少によって地方の市場が急激な勢いで縮小することが予想されるため、この動きは米国よりも激しいものになる可能性が高い。

日本における郊外型のモールといえばイオンだが、同社もすでに都市型モールに動き始めている。同社が12月にオープンした「イオンモール岡山」は、JR岡山駅から徒歩5分に場所に位置している。今後はこうした形態の店舗が急激に増えてくるだろう。

交通の便がよい場所に建つモールに、ベビ連れOKの高級フレンチが並ぶ光景は、もう間もなく、日常的なものになる。

加谷 珪一 (かや けいいち)

経済評論家。東北大学卒業後、投資ファンド運用会社などで企業評価や投資業務に従事。その後、コンサルティング会社を設立し代表に就任。マネーや経済に関するコラムなどの執筆を行う一方で、億単位の資産を運用する個人投資家の顔も持つ。著書「お金持ちの教科書」(阪急コミュニケーションズ)ほか多数。

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加谷珪一

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