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都心の不動産を中国人投資家が大人買い

中国人が好むのは中国人がいない高級マンション

このところ東京都心では、こうした大型ビルばかりではなく、区分のマンションなど小さな物件も飛ぶように売れている。主な買い手は中国人の個人投資家である。

彼等は基本的にブランドが大好きでなので、お手頃物件よりも、一等地に建つ高級物件を好む傾向が強い。特に、赤坂、麻布、青山の3地域が好まれており、不動産業界では3Aとまで呼ばれている。

このところ円安が進んできたことで、グローバルに見た場合、日本の不動産には割安感が出てきている。また中国の不動産は完全にバブルになっているので、中国人の投資家からみれば、日本の物件にまだまだ安いという感覚があるのだと考えられる。

しかし、あまりにも中国人投資家が多いことで弊害も出ているといわれる。一部のマンションでは購入者の過半数が中国人となってしまい、管理組合が機能しなくなる可能性が出てきたため、販売を中止するという事態になった。

中国人は非常にドライで現実的なので、中国人があまり世界で好かれていないことはよく理解している。最近では「中国人がいない高級マンションの物件を紹介してくれ」と頼んでくるらしい。

このように都心の不動産市況が好調なのは、円安による割安感と日本のインフレ期待が背景にある。だが一方で、経済が二極分化することによる投資の偏りで、供給が足りなくなっていることや、銀行の融資先が不動産以外に見つからないという需給的な面も大きい。

首都圏のマンション価格はこのところ急上昇しているが、供給戸数は減少傾向にある。日本経済全体が低迷する中、首都圏や地方の中核都市など、一部にだけに資金が集中するものの、それに見合う供給はなく、価格だけが上昇するという図式である。

大手町など東京の中心部では、次々と再開発が行われている。だが経済全体のパイが増えないと、いくら新しいビルを作っても、より築年数の古いビルから入居者を奪うだけである。この図式は今度は都市部と地方の間にもあてはまることになる。地方から都市部へと人や企業が移動しているだけで、全体のテナント需要は増えない可能性が高い。

本来であれば、外国企業の誘致などでテナント需要そのものを増やす政策が望まれるが、現在の政治状況ではそれを許す雰囲気はない。日本の不動産市場は再び「いつか来た道」を歩んでいるのかもしれない。


加谷珪一(かやけいいち)
評論家
東北大学卒業後、投資ファンド運用会社などで企業評価や投資業務に従事、
その後、コンサルティング会社を設立し代表に就任。
マネーや経済に関するコラムなどの執筆を行う。
億単位の資産を運用する個人投資家でもある。
著書「お金持ちの教科書」(阪急コミュニケーションズ)
加谷珪一のブログ http://k-kaya.com

加谷珪一

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