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住友林業「The Forest Barque」
木を活かした事業用建築の魅力に迫る

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木造の事業用建築が多くの企業・経営者から注目を集めている。

2025年4月、矢橋ホールディングス(岐阜県大垣市)による、多文化共生館『SAXIA(サクシア)』が竣工を迎えた。広大な敷地に建ち、豊かな植栽に囲まれた施設は木の質感が印象的で、大開口の窓からは室内に光が降り注いでいる。

この木造施設の設計から施工を手掛けたのは、森林経営、木材・建材の流通・製造から戸建住宅、賃貸住宅、不動産事業など、「木」を軸に幅広い事業を展開する住友林業だ。同社は2024年5月より木造の事業用建築ブランド『The Forest Barque(ザ・フォレストバーク)』を本格展開しており、『SAXIA』はこれにより建てられた。

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『SAXIA』のエントランスへ続く緑豊かなアプローチ。施設は周辺・館内ともにバリアフリー。

『The Forest Barque』は木造事業用建築の企画・設計から建築、アフターサービスまでをトータルでサポートするブランドだ。これまでに、オフィスやクリニック、店舗などを手掛けてきた。ここではその魅力に迫るとともに、『SAXIA』のプロジェクトメンバーにも住友林業に依頼した経緯や、竣工後の使い勝手などについて尋ねた。

事業用途でも拡大し続ける「木」による施設

住友林業は従前から戸建ての延長で事務所やクリニックなども手掛けており、昨年そのニーズに応える形で木造の事業用建築ブランド『The Forest Barque』が誕生した。「Barque(バーク)」はフランス語で中・小型帆船を意味し、事業用建築は起業家・経営者にとって、大海原を乗組員とともに航海する帆船のような存在。ここに、住友林業のこだわりである「木」のイメージを重ね合わせたのが、ブランド名の由来だ。

なぜ、木造の事業用建築が増えているのか。ひとつは、2010年に制定された、大規模建築や事業用建築において木造を推進する「木促法(脱炭素社会の実現に資する等のための建築物等における木材の利用の促進に関する法律)」が関係している。ESGやSDGsに対する認識が浸透するなか、脱炭素をはじめとするエコフレンドリーに興味を持つ経営者は増え、木造の事業用建築に対する注目度が高まることに。東京オリンピック2020に向けた建築ラッシュではスチール由来の素材供給が滞り、特定のマテリアルに依存する建築を避けたいと考える経営者が増えたことも無関係ではない。

オフィスやクリニック、保育園・幼稚園、シニア向け施設など、従業員や利用者が長い時間を過ごす場所では、「木の温もりを感じながら過ごしたい」と、QOLの観点から木造を選ぶケースも目立つ。こうした背景が、『The Forest Barque』へのニーズを高めている。

下の画像をタップすると公式HPの施工事例集へ。

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新時代の木造事業用建築5つの魅力

ここからは『The Forest Barque』の魅力を、5つの視点から紐解いていこう。

① 心地よさやぬくもりのある空間

『The Forest Barque』は、人が自然とのつながりを感じるための設計や手法の「バイオフィリックデザイン」を実践。木質素材や構造躯体の現しなど、木が人にもたらす心地よさやぬくもりを感じる空間を提案している。これによりメンタル面とフィジカル面の双方に対するポジティブな効果や、木や緑が視界に入る割合を増やすことで、体調不良やモチベーションの低下を緩和、ストレス軽減も期待できる。オフィスはもちろん、医療・介護施設で木造が増えているのは、こういった理由があるからだ。実際のところ、研究機関による実証実験では、木がもたらすリラックス効果や睡眠の質向上、パフォーマンスアップなど、ウェルビーイングに資すると確かめられている。

② 設計の自由度が高く災害に強い

窓や玄関などの開口部を広く取る大開口と大空間も『The Forest Barque』だからこそ実現できること。断面の柱と梁を金属同士のメタルタッチで強固に緊結する「ビッグフレーム構法」は住友林業独自の建築技術で、高い耐震性を実現しながら設計の自由度が高いのが強みだ。明るい光が差し込む空間や、仕切りのない大空間を設けられる。ちなみに、消防署や警察署などの防災拠点となる建物と同等の耐震等級3を推奨しており、施設は4階建てまで対応。木造は耐火性も気になるが、『The Forest Barque』は高い防火性能である準耐火構造が標準。建物の性能と快適性を両立している。

③ 気密性・断熱性が高くランニングコストを低減

環境性能の高さにも注目したい。同ブランドでは高い気密性、高性能な断熱材、断熱性に優れる構造材と窓を組み合わせ、業界トップレベルの高い断熱性を実現。これに加え、エネルギー効率の高い機器を導入することで、ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)Ready基準になることを目指している。ZEBとは、高断熱仕様などで快適な室内環境を保ちながら、省エネと創エネで「建物で消費する年間の一次エネルギーの消費量を正味(ネット)でゼロにする建物」のことで、高い環境性能であることの証しだ。

気密性・断熱性が高いので、日々の光熱費を低く抑えられる。昨今はエネルギーコストの上昇が社会課題で、一般的な住宅より広い事業用施設ではなおさらのこと。コンビニエンスストアやシニア施設は24時間365日エアコンをきかせる必要があり、事業の継続にも深く関わる。『The Forest Barque』はこうした課題の解消にも寄与する。

④ 建てる時からサステナブル

鉄骨造や鉄筋コンクリート造に比べて、木造の施設は建設(建材資材の調達から輸送、施工・建設、修繕、廃棄・リサイクルまで)に際して発生するCO2である「エンボディドカーボン」の発生も少ない。建設後もCO2を固定し続けることで環境に貢献するのが特徴だ。世界の建設セクターではCO2削減の意識が高く、欧州ではエンボディドカーボン削減を義務化する方向で進んでおり、日本が追随する可能性も。木造による事業用建築は時代を先取りするだけではなく、SDGsやESGの取り組みをアピールするのに効果的で、ブランド力アップにつながる。

⑤ 完成後のアフターケアも万全

完成後は構造躯体、防水、防蟻について、住友林業が指定する定期点検を実施することで保証期間を10年延長し、最大30年という長期保証を適用。業務用建築でこれほど手厚いケアは珍しい。補修・修理をはじめ、各種相談は24時間365日受付のコールセンターで対応する。工事図面や部材・設備仕様書などの建築時データ、メンテナンス履歴は一元管理し、必要な時に最適なサポートができるシステムも整えた。建てた後の保証・ケアといった大きな関心事に対しても丁寧に応える。

起業家・経営者に寄り添ったプロダクトとサービスを提供する『The Forest Barque』。こうした点を評価し、冒頭で挙げた矢橋ホールディングスは同ブランドに白羽の矢を立てたわけだ。

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『SAXIA』のエントランス。デザインに溶け込む優しいスロープも印象的。

同社は国内10社、海外7社で事業を展開しており、金属事業、木材事業、石灰事業を展開するグローバルカンパニーだ。

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矢橋ホールディングス代表取締役会長 矢橋龍宜氏

戸建てをはじめとした建築事業も行っており、本来であれば自社で企画・建築してもよかったはずだが、「『The Forest Barque』の選択肢以外は考えなかった」(矢橋氏)という。なぜなのか、次ページからは『SAXIA』に焦点を絞りつつ、『The Forest Barque』の魅力にもっと迫ろう。

➡︎ The Forest Barque の公式HP
➡︎ The Forest Barque について問合せる

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