ENRICH(エンリッチ)

The Style Concierge

アウディ A5/S5クーペ

この新型ユニットを積んだS5クーペを実際に走らせると、省燃費はともかくパワフルさは感じる。出だしからトルクの立ち上がりが早く、パワーはリニアに増幅していく。エンジン開発者が“エモーショナル”という言葉をしきりに繰り返していたが、その意味がわかったような気がした。

その背景にはヘッドまわりに仕掛けがあるらしい。どうやら高膨張比のミラーサイクルの進化版を採用したようだ。吸排気バルブの開閉を早くしたり遅くしたりし、効率のいい一連の行程をやり遂げる。開発者によれば、3200回転までで一般的な走行の95%はまかなえるという。

SME201607_4

走行関係のテクノロジーではアウディドライブセレクトも見逃せない。これは、エンジン/ギアボックスのレスポンスやサスペンションの設定、ステアリングのフィール、エンジンサウンドの聞こえ方、アダプティブクルーズコントロールの反応などを好みに合わせてセッティングできるものだ。面倒であればオートで十分だが、ダイナミックにしてスポーティなドライビングを楽しむことができる。

当然これも試してみたが、その反応は思いのほかわかりやすくフィールの違いを得た。エンジンサウンドも変えられるのはなかなかニクい演出である。

SME201607_5

といった感じの新型A5/S5クーペはドライバーズシートもクーペライクであることを記しておこう。タイトな印象をもたらすスペースもそうだし、太いセンターコンソールやD字のステアリングなどスポーティな雰囲気が備わる。クーペはこうでなくちゃ!ってお手本だ。まんまドライバーズカーである。

最近はSUVラインナップを充実しているアウディであるが、こういったニッチなクーペモデルには開発者のやりたいことが色濃く出ている分“らしさ”を強く感じる。SUVブームの中あえてのクーペ選びなんて、かなり大人の選択なんじゃなかろうか。新型A5/S5クーペはその期待を満足させてくれる一台である。

九島辰也

九島 辰也 (くしまたつや)

モータージャーナリスト兼コラムニスト/ 日本カーオブザイヤー選考委員。「Car EX(世界文化社)」「アメリカンSUV/ヨーロピアンSUV&WAGON(エイ出版社)」編集長「LEON(主婦と生活社)」副編集長を経て、現在はモータージャーナリスト活動を中心に様々なジャンルで活躍。2015年からアリタリア航空機内誌日本語版編集長、2016年から「MADURO(RR)」総編集長もつとめる。

連載コラム

九島辰也

Return Top