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今後の改善に期待? 日本の税制について

今後の導入が期待される
美術品の寄付に対する優遇

「100万円未満の美術品が減価償却の対象となる」制度は世界的に見ても珍しく、日本以外の国ではほとんど見かけません。美術品の購入時にメリットが受けられるこの制度は、コレクター初心者にとって最適の制度といえるでしょう。若手作家の作品を購入するのに最適な国は日本であるといっても過言ではありません。是非みなさんも新しく導入されたこの制度を活用してコレクターの第一歩を踏み出していただければ嬉しく思います。

次回以降に詳しく説明しますが、欧米を中心とする海外では、美術品の購入時ではなく、美術品を寄付したときの税額控除が非常に大きく、この制度によりコレクターが積極的に美術館などに寄付を行っています。市民もコレクターの寄付によって貴重な作品を美術館で鑑賞することができるようになるので、その行為を賞賛し、コレクターをリスペクトしています。寄付を行ったコレクターは社会的な名誉や社会的責任を果たしているという達成感を得るとともに、税制上の優遇を得られるのです。歴史的に重要な作品が国外に流出することも防げるため、結果として自国に質の高い美術品が数多く残り、それが観光資源となり、有望な若手作家を集めることにもなるという良質な循環構造が存在します。

日本でも現在、諸外国と同様の税制を取り入れるように活動しいている団体があります。それは、32のギャラリーが会員として所属する「日本現代美術商協会(CADAN=Contemporary Art Dealers Association Nippon)」という団体です。文化庁に対して税制改正の要望を出し、日本の税制を海外と同基準に変えていこうと働きかけています。海外における税制は、このような民間からの声を受けて国が動いて実現されていたものも多く、日本でも美術品の寄付に対する優遇措置が実施されるかもしれません。今後に非常に期待したいと思います。

小松隼也 (こまつ じゅんや)

長島大野常松法律事務所に所属し、企業法務や訴訟を中心に幅広い分野を専門として取り扱う弁護士。また、アート、ファッション、デザイン、ミュージックといった芸術文化産業に関する造詣を活かし、法律相談、契約交渉、訴訟を数多く手掛ける。

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小松隼也

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