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The Style Concierge

Vol.3 現代アートをカテゴライズ 平面編 3/3

その後、写真は記録、ジャーナリズム、さらにはコンセプトを持たせる現代アートなど、その使われ方は多岐に広がっていき、今日に至ります。米出身のウォーカー・エバンスのように、南部農村のドキュメント写真を撮り貧困や苦しみをストレートに伝えたことで有名になる写真家がいれば、ドイツの写真家であるトーマス・ルフは、肖像写真の1辺を2メートルほどまで大きく引き伸ばして展示する「ポートレート」シリーズをきっかけに、有名になりました。肖像写真はそもそも小さいものですが、あえて大きくすることで人は写真の前を素通りできず、ついつい考えてしまう……。そんなメッセージを作品に込めたわけです。

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そうすると、エバンスは写真家、ルフは現代アート作家というようにわかれます。ただし、市場では明確な区別はなく、写真家だから安い、作家だから高いという区分けはありません。しいて言うなら、アート写真はコンセプチュアルであり、オーディエンスにインパクトを与えたい目的もあるのか、サイズが大きいようです。冒頭で紹介したアンドレアス・グルスキーは、ノーベル物理学賞を受賞した梶田隆章教授が、ニュートリノを観測した「スーパーカミオカンデ」を撮影した「カミオカンデ」という作品を制作していますが、そのサイズはなんと縦228.2㎝×横367.2㎝! 画面の下にはボートに乗った作業員が映っていますが、そこからも、この装置全体の大きさを感じることができます。ただし、この作業員はあとから付け加えたフィクションだそうです(笑)。

写真家、アーティストのどちらの作品もギャラリーやアートフェアで扱われ、価格は需給で決まります。ちなみに、「アラーキー」の愛称で知られる写真家の荒木経惟の作品は、今昨年3月に開催された「アートバーゼル香港」にも出品されていました。

サイズが大きいから高価、小さいとリーズナブルということもありません。価格は、あくまでも市場=人気度合いにより決まります。ただし同じ写真家・作家の場合では、高い技術を擁するプラチナ・プリントが最も高価で、次いでシルバー・プリント、通常のカラープリントになります。

また、写真は複製ができるのも特徴です。一般的にはギャラリーと契約していて、通常は「エディション(限定部数)」として販売されます。ギャラリーにより細かいところは異なりますが、その際は例えば「エディション1~5は10万円」「エディション6~10は20万円」というように、マーケットに出回る数が増えるほど、価格は高くなっていきます。というのも、初期ロットが売れたのにニーズがあることを意味するからです。人気があればあるほど価格は上がりますが、作家にも還元されるという仕組みです。

エンリッチ編集部

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