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The Style Concierge

Vol.3 現代アートをカテゴライズ 平面編 2/3

例えば、ピカソの作品には銅版画がいくつもかありますが、やはりファースト・エステートは高価。というのも、銅版は凹面に油性インクをつめ、平らな部分のインクをふき取り、プレス機の圧力により凹部分のインクを紙に付着させますが、何度も圧をかけることでエッジの部分がつぶれてくるからです。

もちろん、途中でコーティングをかけてセカンド・エステート、再びメンテナンスしてサード・エステートというように順次刷っていきますが、やはりファースト・エステートはエッジが効いてパキッとした印象があるので人気は高くなります。

また、紙に印刷された版画は折れやシミ、色あせなどを防ぐため、管理にも気を使います。愛好家であれば、同じ作品を3枚買うことも珍しくありません。1枚は額装して飾り、残り2枚は、中性(あるいは弱アルカリ性)で長期保存に適している「中性紙」で挟み、温度や湿度を管理し、日光の当たらない場所に収蔵しておきます。そして、購入後に作品の価格が上がると1枚を売却、3枚分がペイできれば上出来です。

ーー作家によっては人気の作品が版画を通じて手に入るというのは朗報。かつ、厳重な管理で希少性と付加価値は保たれているので、資産性の点でも安心だ。次回は平面編の最後、「写真」について紹介しよう。


三井一弘(みつい・かずひろ)
アートディーラー/アート解説者、ミツイ・ファイン・アーツ代表、水野学園理事。

1970年横浜市生まれ。国内で現代アーティストとして活動した後、アートディーラーに転身。ウィルデンスタイン(NY)の東京店にて、イタリア・ルネサンス絵画や印象派、現代美術など、多岐にわたり取り扱う。2016年に独立し、現在は古典美術から現代アート作品までコレクターに紹介する傍ら、現代アートとアート市場についてセミナーで講演するなど、精力的に活動を行っている。


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▼三井一弘 著
 
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知的生きかた文庫 1,058円
 
この本を読まずして、美術展に行くのはもったいない!
 
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エンリッチ編集部

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