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The Style Concierge

Vol.3 現代アートをカテゴライズ 平面編 1/3

平面アート:その② 水彩

油彩に続いて高い付加価値が認められるのは、同じく一点モノの水彩です。言わずもがな、水彩絵具で描かれた絵を指します。これを専門にする作家もいるのですが、なぜ、油彩よりも評価が低いかというと、アートの文脈では、外でも手軽にペイントできる水彩は、油彩の手前の「記録」のようなもの。これをアトリエに持ち帰り本格的に油彩に取り掛かる作家も少なくなかったからです。いうなれば「取材ノート」に近い扱いから、水彩の評価は油彩に比べると低くなりがちです。

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また媒体が紙であることも大きく影響します。紙に水溶性の絵具で描くことから、日光や紫外線は大敵で、シミやカビ、さらには色あせに弱いことも挙げられます。経年による紙の劣化、折れやすいのも難点で、保存に手間がかかることから、コレクター側からすると敬遠してしまうのかもしれません。それが、市場価値にも反映されているのでしょう。

しかしながら、セザンヌの水彩では十億円を優に超える作品もあり、油彩・水彩ともにアートのメジャージャンルであることは確かです。家やオフィスに飾りやすく、価格の面でも上を見れば数百億の作品もありますが、手ごろなものもたくさんあります。気に入った作家・作品を見つけ、購入してみてはいかがでしょうか。

ーーアートの代表格ともいえる平面作品。なかでも油彩はトップの地位で、水彩はそれに次ぐ評価だという。次回も、同じく平面アートの世界に触れていこう。


三井一弘(みつい・かずひろ)
アートディーラー/アート解説者、ミツイ・ファイン・アーツ代表、水野学園理事。

1970年横浜市生まれ。国内で現代アーティストとして活動した後、アートディーラーに転身。ウィルデンスタイン(NY)の東京店にて、イタリア・ルネサンス絵画や印象派、現代美術など、多岐にわたり取り扱う。2016年に独立し、現在は古典美術から現代アート作品までコレクターに紹介する傍ら、現代アートとアート市場についてセミナーで講演するなど、精力的に活動を行っている。


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エンリッチ編集部

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