人間の本質や存在意義、無意識な生理現象を体現

たくさんのブースを巡り、気づけば閉館時間が迫ってきました。
最後に編集部が向かったのは、大阪・桜ノ宮に拠点を置く「アートコートギャラリー」。2003年の設立以来、国際的評価の確立した美術家から実力ある若手まで、幅広いアーティストの作品を扱い、コンセプト・素材・技術ともに独自性に富む優れた現代美術を多数紹介しています。
実際に展示作品を制作した3名のアーティストが在廊していたのでお話を伺いました。

ブースの中でひときわ目を引く、華やかな色使いが美しい油彩の絵画は、牡丹靖佳の作品。
机上に置いた「花を活けた花瓶」が鏡写しになり、さらに湖の水面に映った様子を描いており、花瓶という具象の物を、どこまで抽象的に表現できるか挑戦したそう。
「鏡に投影して水面に反映するまでの間に、花が揺れ動いたり、開いたり、枯れたりと、時間の流れも経過します。4分の1に区切った絵をただ壁紙のように写すのではなく、時間の経過も描いています」と作品へのこだわりを熱く語ってくださいました。

よく見ると、全ての絵がそのまま反転しているわけではなく、細やかな違いがある……見れば見るほど絵画の世界観に引き込まれる作品です。

存在感がある漆の立体造形「Taxis Groove」は、漆工アートを数多く手がける石塚源太の作品。漆の質感を生かす表現を得意としており、蒸して磨くと出る艶と塗り重ねたときの奥行を作品の表情として落とし込んでいます。
「Taxis(走性)」は、自分の意思とは異なるところで起こしてしまう生理現象のこと。漆が無意識に起こす現象を「うねり」という形で表現しています。

木や金属の芯を使わずに、麻布と漆を重ねて形をつくる、奈良時代の仏像制作でも用いられた伝統的な立体表現の技法「乾漆技法」を使って制作しているそうです。

支持体にはアルミのダクトホースを使用し、最後に内部の原型を取り除いて空洞構造に仕上げており、立体の形は原型となる素材を扱い、手元で作業しながら探っていくとのこと。伝統的な工芸と現代アートが交差する、漆工アートの美しさと力強さを感じる作品ですね。
最後にお話を伺ったのは、日常のなかで目にする立体物を樹脂で複製し、表面に色を施すことでまるで本物のような作品を制作するアーティスト、大西伸明。

「中間領域的なものを生み出したいという想いで作品制作をしています。たとえば、こちらの脚立のオリジナルは、経年と共に錆ができたことで一点ものになった人工物。リサイクルショップで売っていそうなビンテージ品をバラバラにして樹脂で蘇らせています。」

完全に再現するのではなく、薄さや透明性などにオリジナルとは異なる様相を取り入れているのも彼ならではの作風。ぼんやりとした大きな循環のなかに作品を押し込めることで「モノ」や「オリジナル」の存在意義を問いかけています。
日本の美術市場を牽引|アートフェア東京のさらなる進化

アジア最古かつ日本最大のアートフェアとして今年も開催されたアートフェア東京2026。「年々ますますの進化を続けており、出展者のレベルも向上している」と、マネージングディレクター・北島輝一氏は語ります。
ギャラリストやアーティストとの距離も近く、さまざまな出逢いがあるのもイベントならではの魅力。ここで生まれた新たな繋がりはきっと人生の財産となり、自身の知見と視野を広げてくれることでしょう。
アートの世界へ足を踏み入れる第一歩に、訪ねてほしいイベントです。
TEXT:田宮有莉







