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インフレになった時、お金持ちはどうする?

株式も値段に合わせて上昇するが、少し注意が必要だ。企業の中にはインフレになると業績が悪化して、逆に株価が下落するところも出てくる。最終的には物価に合わせて株価も調整されるので、継続保有していれば問題ないが、一時的には下落するので、その点については覚悟しておいた方がよい。だが、こうした株式の特徴はインフレを利用して大きな利益を上げようとする一部の投資家にとっては絶好の投資機会となる。

最終的に株価は上がることがほぼ確実であるにもかかわらず、インフレ発生直後は大きく下落する銘柄があるのだとすると、そのタイミングで投資できれば大きな利益を確保できる。日本でも戦争直後にこの手法で巨額資産を築いた人は多い。

実は同じようなことが不動産にも言える。インフレが進むと、経営が苦しくなった企業や個人の中には、日々の支払いなどのキャッシュを確保するため、今後、価格が上昇することが分かっていても物件を手放すケースが出てくる。このため、割安な物件を入手できる確率が高まるのだ。このタイミングで物件を取得できれば、驚異的な利回りを得ることができるだろう。

国際興業グループ創業者で帝国ホテルの会長も務めた小佐野賢治氏や、森ビル創業者の森泰吉朗氏などは、まさにこの手法で巨額の資産を構築した。諸外国でも同じような事例がたくさんあるので、このやり方はインフレ時における定石と考えてよい。

金も基本的には物価上昇に連動して価格が上がっていくので、インフレ・リスクをヘッジする手段となる。ただ金の場合、インフレが収まると価格を大きく下げる可能性もあるので、ある種の投機を行う覚悟が必要だ。金は保管にもコストや手間がかかるので投資対象としてはあまり優秀とは言えないので、この点についても注意が必要である。

インフレ時に金よりもさらに値を上げる可能性が高いのはビットコインなど仮想通貨だろう。仮想通貨はインフレ時には投機対象となる可能性が高く、場合によっては驚くような価格上昇を見せるかもしれない。一方で、インフレ収束の見通しが立った時には暴落することも十分に考えられるので、相当な覚悟がある人以外は、安易には手を出さない方がよい。

いずれにせよインフレ時に現金は最悪の資産保管手段であり、何らかの形で投資を行わないと資産は維持できない。ビットコインに代表されるような積極的な商品を対象にするのか、外貨など安定的な手段にするのかは人それぞれだが、何も行動しなければ、資産額を減らしてしまうのはほぼ間違いない。

加谷 珪一 (かや けいいち)

経済評論家。東北大学卒業後、投資ファンド運用会社などで企業評価や投資業務に従事。その後、コンサルティング会社を設立し代表に就任。マネーや経済に関するコラムなどの執筆を行う一方で、億単位の資産を運用する個人投資家の顔も持つ。著書「お金持ちの教科書」(阪急コミュニケーションズ)ほか多数。

連載コラム

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加谷珪一 著
 
「日本は小国になるが、それは絶望ではない」
KADOKAWA
単行本 1,430円
 
国際競争力の低下と少子高齢化が進む日本の未来とは?

将来の日本は小国になると予想し、小国になることは日本再生のチャンスであると唱える気鋭の経済評論家が、戦後最大の転換期を迎えた日本の新しい国家像を紐解く一冊。


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