ENRICH(エンリッチ)

The Style Concierge

会食で相手にしゃべらせる

承認欲求をどうコントロールするのか

筆者もこれまで「この人は何を目的にこの会食をセッティングしているのだろうか」と疑問に思わざるを得ない人を何人も見てきたが、こうしたタイプの人は総じて、ビジネスで大きな成果を上げていない。逆に言えば、この部分を吟味するだけでビジネスの成果は大きく変わるともいえる。

お金持ちになれるかどうかは、過大な承認欲求をどれだけコントロールできるのかにかかっているといっても過言ではない。自分の周囲にいる人をうまく自分のビジネスに巻き込むためには、自身の承認欲求を極力、抑制しなければならない。

お金持ちには、人を使うことにかけては天才的という人が多いが、それは相手が欲していることを知る努力を徹底しているからである。相手が欲するものを知るためには、自分のことはまず横に置いておき、相手のことに集中しなければならない。そのためには自身に対する過度な承認欲求は邪魔にしかならないのだ。

過度な承認欲求があると人をうまく使うことができず、結果として自身の社会的な地位も向上しないので、さらに承認欲求が激しくなるという悪循環に陥る。

営業の現場でもこれが大きな影響を及ぼしている。承認欲求が強すぎる営業マンは、顧客の前で自分のことばかりしゃべってしまう。こうした営業マンが、大した成果を上げられないのは容易に想像が付くだろう。断トツの成績を上げる営業マンは、決して饒舌ではなく、むしろ顧客の話をじっくり聞くタイプの人が多い。顧客の状況が理解できているからこそ、ここぞという時に思い切って商品をプッシュできるというものだ。

会食もその延長線上にあり、微妙、かつ重要な情報を得ようと思うからこそ、アルコールが入った場でのコミュニケーションを行っている。アルコールが入ってリラックスした環境になると、平凡な話題に対するちょっとした反応からでも、相手の状況をかなり詳しく理解できる。

成果を求める会食の場では、リラックスした雰囲気とは裏腹に、頭の中は「これ以上は無理」というレベルまでフル回転していなければならない。ある資産家は筆者に対して「会食の場というのは、すべてを賭けた真剣勝負です」と言っていたが、まさにその通りだろう。

加谷 珪一 (かや けいいち)

経済評論家。東北大学卒業後、投資ファンド運用会社などで企業評価や投資業務に従事。その後、コンサルティング会社を設立し代表に就任。マネーや経済に関するコラムなどの執筆を行う一方で、億単位の資産を運用する個人投資家の顔も持つ。著書「お金持ちの教科書」(阪急コミュニケーションズ)ほか多数。

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