ENRICH(エンリッチ)

The Style Concierge

税金に敏感な理由

エンリッチkaya2009

お金持ちの人は総じて税金に敏感である。日本は累進課税となっており、お金を稼げば稼ぐほど、より高い税率が課されてしまう。せっかく稼いでも多くが税金で徴収されてしまうという現実を考えると、お金持ちが税金に敏感になるのは当然といえば当然である。

だが、お金持ちの人が税金に敏感なのは、お金持ちになって、税金がたくさん取られることを知ったからではない。実は、お金持ちになる過程で、すでに税金の重要性に気付いており、常に税金について関心を寄せてきたことが大きく影響している。言い換えれば、税金について深い理解があったからこそ、経済的に成功できたともいえる。

では、経済的に成功するにあたって、なぜ税金の知識が重要なのだろうか。それは、税金とどのように付き合うのかで、実際に手元に残るキャッシュの額が大きく変わってしまうからである。

税金を知らないと事業計画すら立てられない

例えば、銀行からお金を借りて飲食店を開店するケースを考えてみよう。店を出すためには、小さい規模であっても、厨房機器や内装など1000万円単位の初期投資が必要となる。仮に2000万円の借金とすると、5年融資の場合、単純計算で毎年400万円ずつ銀行に返済しなければならない(ここでは利子は考慮に入れない)。

何とかお店を軌道に乗せて年間400万円の利益を上げたとしても、このお店は破綻してしまう。なぜなら400万円の利益に対しては法人税が課されてしまい、最悪の場合には100万円近くが税金で持って行かれてしまい、手元には300万円しか残らず、借金を返せないからである。

事業を行う人にとって、いくらのお金が入り、利益がいくら出たのかだけでは不十分である。税金も含めていくらのキャッシュフローが確保できるのかを考えなければ、事業を継続することはできない。

これは法人税の話だが、事業に関わると、個人の所得税と法人税についても比較せざるを得なくなる。会社に利益を多く残して法人税を払った方がよいのか、役員報酬など個人の所得を増やした上で所得税を払った方がよいのかは状況によって違ってくる。細かいことは税理士に任せるにしても、所得税と法人税の基本を理解していないと、基本戦略を立てることすら難しいのだ。

一部の芸能人が事務所に所属しているにもかかわらず、自身で法人を設立して、事務所からの支払いを法人にしているのもこうした理由からである。

多額の収入を得ている人にとって税金の影響は極めて大きいが、それほど収入が多くない段階から税に関する戦いは始まっている。それほど成功していない段階から戦略的に税金について考えていた人と、そうでない人には大きな差が生じると思ってよいだろう。

日本人の多くはサラリーマンだが、所得税ひとつとっても、よく調べるといろいろなことが分かる。

冒頭でも述べたように、日本の所得税は累進課税となっており、所得が高いほど税率は上がっていく。見かけ上の税率は、年収195万円超、330万円以下の人は10%、330万円超、695万円以下の人は20%といった具合だが、これはあくまで見かけ上の数字である。実は日本の所得税制では、年収が低い人は、事実上の無税となっている。

ここで示した税率は額面の給与に対してかかるわけではなく、現実にはいくつもの控除を差し引いた金額について課税される。例えば、年収600万円の人は、給与所得控除、基礎控除、配偶者控除(配偶者がいる場合)、社会保険料控除などが適用され、課税対象となる所得金額は270万円以下まで下がってしまい、最終的な税額は17万円程度である。つまり600万円稼いで、支払う税金は17万円なので、実質的な所得税率はわずか2.8%である。米国や欧州など諸外国の場合、がっちり税金が徴収されてしまうことを考えると、これは大きな違いだ。

つまり日本の場合、給与として受け取る金額が少ないほど(つまり個人の年収が低いほど)、強烈に税金が優遇される仕組みといってよい。日本では中小企業の経営者があまり高額の給料を受け取らず、法人として費用を処理するケースが多いのは、税制によるところも大きい。

加谷珪一

Return Top