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「いつかは」というキーワードはない

衝動がないとシナリオは作れない

お金持ちの人は、仮に長期的なスパンの話であっても、具体的な年限を示していることが多い。10年以内に〇×を実現する、3年間で〇×するといった具合である。

具体的な日時を決めることは、プロジェクトを進めるにあたって極めて重要な意味を持っている。ゴール地点までの日数が決まってしまうと、そこに至るまでに何をしなければいけないのか、そして、いつ実施しなければいけないのかが、嫌でも透明化されてしまう。

この作業はまさにビジネスのシナリオ作りそのものであり、この作業を通じてビジネス戦略というものが形成されてくる。ちなみに戦略というのは、ある目的を達成するための具体的な方策のことを指す言葉である。

成功者は決断が早いといわれるが、それは何も考えず、感覚で物事を決めているからではない。
 
上記のようなシナリオ作りを常に行っており、頭の中にはいつもプランが詰まっているからこそ即断即決ができる。あるチャンスが到来した時には、そのプランを発動するだけなので、端から見ると、即断即決しているように見えるだけだ。

いわゆるサラリーマン体質が蔓延しているような企業では、経営戦略がうまく立案できないケースが多い。その理由は、いつまでに何をしたい、あるいはするべきだといった衝動が経営陣に乏しいため、明確なシナリオを作成できないのだ。当然のことながら、その状態で有益な戦略が立案できるわけがない。

こうした企業の経営者の感覚は「いつかは旅行したい」という人にかなり近いものだろう。市場からは戦略の策定やビジョンの提示を求められるので、半ばノルマに負われる形で、抽象的な戦略モドキを打ち出す結果となってしまう。

こう考えると、お金持ちになれるかなれないかは、実務能力の差ではなく、何かを実現しようというマインドの強さだけで決まってしまうのかもしれない。

加谷 珪一 (かや けいいち)

経済評論家。東北大学卒業後、投資ファンド運用会社などで企業評価や投資業務に従事。その後、コンサルティング会社を設立し代表に就任。マネーや経済に関するコラムなどの執筆を行う一方で、億単位の資産を運用する個人投資家の顔も持つ。著書「お金持ちの教科書」(阪急コミュニケーションズ)ほか多数。

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加谷珪一

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