ENRICH(エンリッチ)

The Style Concierge

年下上司とうまくやれる人
にはビジネスの才覚がある

ビジネスが上手な人は世代と無関係

筆者は基本的に上司、部下、取引先など問わず、原則として「さん」づけを用い、会話も丁寧語で行うことをビジネス上の原則としている。

その人物は、結果的に筆者よりも下の立場になってしまったわけだが、それはあくまで機能としての上下関係であって、本人との絶対的な上下には興味がない。以前、上司だったこともあり、丁寧に接していたのだが、それがアダとなってしまった。

筆者が、かつての上司部下の時代と同じように丁寧に接していたことから、彼は筆者のことを自分より下だと見なしたようで、徐々に態度が尊大になり、そのうちかつての部下に接するかのような態度を示し始めた。筆者は、それとなくニュアンスが伝わるよう、何回か警告したのだが、相手にはまったく伝わらなかったらしい。

取引先に舐められているような状況を放置していては社内にも示しがつかない。本意ではなかったが、筆者は強権を発動し、態度をあらためるよう強く叱責し、かつての上司に謝罪させた。

このような人物は、相手が媚びて頭を下げてくるといった、極めて原始的なレベルでしか上下関係を把握できない。会社をやめてもその感覚から抜けきれないので、機能としての上下関係をうまく構築することができなかったのだ。彼はこの先、どこの組織に行っても成果を上げることは難しいだろう。

この話を逆に考えた場合、年下の上司とうまくつきあえる人には相応のビジネスセンスがあると解釈できる。年下が上司の場合、単純なゴマスリや媚びへつらいはあまりうまく機能しない。実際にその立場になった人ならよく分かると思うが、年配社員からそのように振る舞われても、まったく嬉しくない。

実はビジネスで成功を収めた人の多くは、年上キラーであると同時に、年下ともうまく付き合えるという特徴を持っている。それは機能としての上下関係の構築がうまいからだ。年下が上司なったということは、出世が遅れたということかもしれないが、年下上司とうまくやれるのであれば、ビジネスの基本的な素養は持っている。

こうした年配社員は、実は企業のマネジメント層からみると、非常に価値の高い人材となり得るのだ。

加谷 珪一 (かや けいいち)

経済評論家。東北大学卒業後、投資ファンド運用会社などで企業評価や投資業務に従事。その後、コンサルティング会社を設立し代表に就任。マネーや経済に関するコラムなどの執筆を行う一方で、億単位の資産を運用する個人投資家の顔も持つ。著書「お金持ちの教科書」(阪急コミュニケーションズ)ほか多数。

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