ENRICH(エンリッチ)

The Style Concierge

電話をうまく使う

人は過去の経路に大きく依存してしまう

実際、電話でなくても済む話をわざわざ電話で伝えてくる人というのは世の中に一定数存在する。こうした非効率をお互いに繰り返していると、その時は小さなロスにしかならないかもしれないが、1年くらいの期間になると相当なものとなる。コミュニティ全体に拡張すれば、それこそ莫大なロスとなり、生産性を大幅に引き下げてしまう。こうした貧乏ループに入るな、という意味でホリエモンは電話をかけるなと主張しているわけだ。

当然のことだが、この話は逆も成立する。電話で話した方が圧倒的に効率がよく、双方にとってメリットがあるにも関わらず、絶対に電話を使わず、メールかメッセンジャーでしか連絡しないというのは、電話ばかり使う人と同様、非効率きわまりない。

お金持ちになりたいと思っているのなら、無意味な電話ばかりかけてくる人と付き合うべきではないし、逆に電話を使えないというような人とも付き合ってはダメである。ツールがうまく使いこなせない人は、基本的に稼ぐ力はないと思ったほうがよい。

では、なぜ電話ばかりかけてくる人や、電話を使えない人、などが出てきてしまうのだろうか。その理由は、人は自分が使い慣れた経路に大きく依存してしまうという哀れな特徴を持っているからである。

無意味に電話ばかりかけてくる人は、若い頃に身につけ、使い慣れてしまった電話の習慣から脱却することができない。最近、電話に出ることができない若者やメールを使えない若者が話題になることがあるが、これも同じメカニズムである。自分が使い慣れたSNSでしかコミュニケーションを取ることができず、電話はおろか、電子メールも使えないという状況に陥っている。

この若者は今はSNSが使えるので何とかなっているが、20年後には、電話しか使えない今の中高年とまったく同じ末路を辿ることはほぼ確定的である。20年後にはまったく新しいコミュニケーション・ツールが登場している可能性が高く、彼らはこれを使いこなせず、さらに若い世代からバカにされるだろう。だが、その若い世代の多くも、やがては同じ行動を繰り返す。こうした人たちに、稼ぐ力を期待することなど、所詮、無理な話である。

道具というのは使いこなしてナンボの世界である。道具というのは時代に合わせて常に進化するものであり、状況に合わせて道具の選択や使い方は変えていかなければならない。

ホリエモンの電話論争を、電話そのものの是非と理解しているようでは危険信号だ。生産性というものをもう一度、じっくり考え直した方がよい。

加谷 珪一 (かや けいいち)

経済評論家。東北大学卒業後、投資ファンド運用会社などで企業評価や投資業務に従事。その後、コンサルティング会社を設立し代表に就任。マネーや経済に関するコラムなどの執筆を行う一方で、億単位の資産を運用する個人投資家の顔も持つ。著書「お金持ちの教科書」(阪急コミュニケーションズ)ほか多数。

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