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リッチな男性は女性にモテるのか?

交渉という心理ゲームにおいて余裕があることは極めて有利

実は、こうしたやり取りは、仕事ができる人なら、ビジネスの現場で自然と実行しているはずである。相手に提携を持ちかけるようなケースはまさに恋愛と同じなので、こうした手法が生きてくる。

提案したプランに合意すれば、大きなチャンスとなるかもしれないし、逆に損失となるかもしれない。何もしなければ、少なくとも損はしない。こうした状況に置かれると、多くの人は、たいてい様子見してしまう。ここで、しつこく提案してしまうと、相手はうっとうしく感じて拒絶モードに入ってしまう。場合によっては、焦っているのではないかと勘ぐられ、足元を見られてしまうかもしれない。

交渉が上手な人は、ここではあっさりと引き下がり、他にも提案する相手がいることを匂わせて、背を向けてしまう。相手はホッとする反面、オイシイ案件を他に持って行かれたのではないかと不安になってしまう。結局、相手の方から話を持ちかけてくることになる。

だがこうした交渉は経済的に余裕がないと無理である。自分の側も提携を急ぎたいというのがホンネであり、キャッシュに余裕がないと、このようにゆったり構えることができなくなる。経済的に苦しくてもこうした交渉ができれば理想的だが、現実はそうはいかない。

逆に考えれば、ある程度、お金に余裕がある状況であれば、こうした手段を活用することは、圧倒的に有利に振る舞えるということでもある。お金持ちがますますお金持ちになる一つの理由がここにある。

ちなみに彼のアプローチ法は、食事に行った後も同じである。大人の付き合いなので、単に食事だけが目的ではないことは双方共に分かっている。だが彼は、その後についても基本的に深追いせず、ダメそうなら何回か食事をご馳走してフェードアウトさせている。

これらに費やしたお金と時間は無駄になっているが、彼はそのプロセスを楽しんでいるし、支出はそのためのコストと割り切っている。彼の心理的なテクニックということもあるのだろうが、もしかすると、彼のこうした「余裕」が、いい雰囲気を醸し出し、彼の男性としての魅力アップにつながっているのかもしれない。

*この記事は2017年4月に掲載されたものです。

加谷 珪一 (かや けいいち)

経済評論家。東北大学卒業後、投資ファンド運用会社などで企業評価や投資業務に従事。その後、コンサルティング会社を設立し代表に就任。マネーや経済に関するコラムなどの執筆を行う一方で、億単位の資産を運用する個人投資家の顔も持つ。著書「お金持ちの教科書」(阪急コミュニケーションズ)ほか多数。

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