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日本のワインはフランス・ワインになれるか?

グローバル経済とワインの密接な関係

1990年代以降、急速に進んだ世界経済のグローバル化で、ワインの評価や流通の世界にはグローバル化の波が押し寄せてきた。かつては、政府の認定が基準のすべてだったが、最近では状況が変わってきている。民間の評価機関やジャーナリストなどによる独自の格付けが重視される方向性にあり、以前ほど政府による認定が市場では評価されなくなっているのだ。

また既存の評価基準や格付けにこだわらず独自の高級ワインを作る動きも活発になっている。こうした動きを加速させたのが、米国シリコンバレーの億万長者達である。

ワイン ライン

米国のカリフォルニアは、現在では世界屈指のワイン生産地であり、フランスの高級ワインにひけをとらない銘柄を数多く輩出している。フランス・ワインが絶対といわれていた時代に、カリフォルニア・ワインが大成功した理由のひとつは、近くにシリコンバレーが存在するという、その絶好の立地である。

カリフォルニア・ワインの拠点であるナパの近くにはハイテクの集積地であるシリコンバレーがあり、億万長者とITエンジニアがたくさんいる。

米国のワイン醸造家は、情報技術を徹底的に活用し、科学的にワインの味や醸造過程を研究してきた。カリフォルニア大学には、世界屈指のワイン醸造学科が設置され、職人の勘だけに頼らない合理的な製法が常に研究されている。

また、ITビジネスで成功した億万長者が次々にワイナリーを買収し、惜しげもなく資金を投入した。その結果、この地域にはワイン醸造の専門家や関連産業、資金が集積し、ワイン版のシリコンバレーとなっているのだ。

最近では、フランスやイタリアなど、伝統的なワイン生産国がこうした新しい製法を逆輸入し、まったく新しいブランドを作る動きも活発である。また南米など第三国もこうした最新製法を導入し、上質なワインを安価に生産している。

政府の認定よって品質を保証するということは非常に重要であり、日本でもこうした動きが出てきていることは前向きに評価してよいだろう。

だがグローバル基準で評価の高いぶどうの品種は、日本での栽培にはあまり適しておらず。日本産ワインは国際的に見ると特殊な存在であることも事実である。

世界的に、市場メカニズムを使ったブランド構築が活発になっている現実を考えれば、より市場にコミットした形でブランドを形成するための努力が必要となってくるだろう。


加谷珪一(かやけいいち)
評論家
東北大学卒業後、投資ファンド運用会社などで企業評価や投資業務に従事、
その後、コンサルティング会社を設立し代表に就任。
マネーや経済に関するコラムなどの執筆を行う。
億単位の資産を運用する個人投資家でもある。
著書「お金持ちの教科書」(阪急コミュニケーションズ)
加谷珪一のブログ http://k-kaya.com

エンリッチ編集部

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