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日本人は稼げなくなっているのか?

世界貿易における輸出シェアは減少の一途を辿っている

エンリッチ コラム 加谷 2

だが、日本製品は実は思ったほど世界で売れていないのだとしたらどうだろうか? 白書では、円安が進んでも輸出数量が伸びない理由について、製品シェアの動向から分析を行っている。

日本は輸出大国と思われてきたが、それは昔の話である。日本の輸出絶対額は、実はドイツや米国と比べてかなり小さい。米国は年間1兆6000億ドル、ドイツは1兆5000億ドルの輸出があるのに対して、日本はその半分である。

実は、20年前まではこれとは正反対の状況であった。世界貿易における日本の輸出シェアは高く、ドイツや米国と肩を並べていたのである。20年間の間に、日本と米独との差はどんどん開き、現在では、両国の半分の水準まで落ち込んでしまったのである。

その主な原因は、市場が伸びている分野で、高い製品シェアを獲得できなかったことにある。例えば、中国向けの輸出を例に取ると、日本はドイツや米国に比べて高いシェアを持つ品目をそれなりに持っているが、市場が拡大している品目のシェアはドイツや米国と比べると低い。

中国では、船舶、自動車、鉄道部品、医療機器といった分野が伸びているが、こうした分野で圧倒的に強いのは、米国企業やドイツ企業である。一方、ボールベアリングやコンデンサといった伸びが低い分野での日本企業のシェアは高い。つまり、日本企業は伸びない分野でだけ、高いシェアを確保しているという図式になっている。

この傾向は、日本経済新聞社がまとめた主要商品・サービスシェア調査の結果からも明らかである。調査対処となった50品目のうち、日本企業は、炭素繊維、自動車、レンズ交換式カメラ、マイコン、産業用ロボットなど9品目でシェアがトップとなった。

産業用ロボットや自動車は付加価値が高く伸びる分野といえるが、それ以外の品目を見ると、マイコンや白色LEDなど、低付加価値の分野も目立つ。マイコン分野でシェア1位のルネサスが経営危機に陥ったことは皮肉としか言いようがないだろう。

デジタルカメラとレンズ交換式カメラの分野では、依然としてキャノンとニコンが高いシェアを維持しているが、デジタルカメラの市場規模は1年間で35%も縮小、レンズ交換式カメラは17%減少した。ソニーのゲーム機器も43%のシェアだが、市場そのものはスマホに押され13%も減っている。

いくら高い技術があっても、伸びる市場でシェアを取れなければ、ビジネスとしては成功しない。日本人はもっと利益に貪欲になり、稼げる人材になる必要がある。

加谷 珪一 (かや けいいち)

経済評論家。東北大学卒業後、投資ファンド運用会社などで企業評価や投資業務に従事。その後、コンサルティング会社を設立し代表に就任。マネーや経済に関するコラムなどの執筆を行う一方で、億単位の資産を運用する個人投資家の顔も持つ。著書「お金持ちの教科書」(阪急コミュニケーションズ)ほか多数。

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