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The Style Concierge

ニース 1/2 
観光地としての国際化が進むニース

今回のテロはチュニジアからの移民により引き起こされましたが、私たちの今回の滞在でも移民社会の問題を感じさせられた体験がありました。それは旅行が長期に渡っていて衣服を自分たちで洗って乾燥させるために、コインランドリーを使用したときのことです。海外では多くの都市でコインランドリーは自宅に洗濯機がない低所得者が多く住むエリアにあることがほとんどで、治安に不安がないエリアか確認しなければなりません。

ニースでは滞在しているホテルからわずか2ブロック先にコインランドリーがあったので、その周りのことについてあまり調べずに、ただ昼間であっても無駄にリスクを取る必要はないので、妻と子供は同行せずに私1人で訪れました。私たちが滞在していたホテルはモナコにも行ける鉄道の駅から徒歩圏で、他にも多くのホテルがあるため夜中まで観光客でごった返す通りに面しています。

しかし、コインランドリーがある通りまで行くと、道を歩いているのは黒人の移民ばかりで短い距離で人種構成が大きく変わることに驚きました。コインランドリーを回すためにコインが必要だったのでお札を崩すためにランドリーの横にある小売店に入ったのですが、店内は薄暗く奥さんは一所懸命働いていましたが旦那さんは友人たちと平日の昼からお酒を飲んでいました。向こうは向こうで観光客が店に入ってくることはほとんどないためか、私の姿をしげしげと見ていました。

数ブロックで世界が変わる場所も
数ブロックで世界が変わる場所も

コインランドリーで洗濯をしている間に同じく乾くのを待っている他のお客と会話をしようとしましたが、気さくで一所懸命話そうとしてはくれたものの、向こうはほとんど英語が話せずこちらもフランス語は苦手なのでほとんどコミュニケーションが取れませんでした。これだけ世界中から観光客が来るにも拘わらず、現地のコミュニティはほんの短い距離を隔てているだけで大きく人種構成が変わり、分断されてしまっていると感じました。

ニースのテロの後にも、ドイツのミュンヘンなどでもテロが頻発しています。元々、人種間で社会が分断していたところに、シリアの内戦などにより大量の移民が流入して、治安が悪化するという悪循環が大陸欧州で起こりつつあります。理想主義的に難民たちを受け入れる姿勢を見せてきたEUですが、その理想主義による弊害が顕在化して来ていて、さらに英国のEUからの離脱もあり、国家の枠を超えて統合を目指すというEUの理念が重大な曲がり角に差し掛かっていることは間違いありません。

ただ、一方で今回のコラムでも紹介したように、フランスを始め多くの大陸欧州の国々が、その長い歴史に多様性を加えることで都市としての魅力が増し、中国など世界中から観光客を集めていることもまた事実です。これ以上テロの頻発を許して、EUが瓦解することのないように、うまく治安の改善と多様性の受容のバランスを取りながら、引き続き観光地としての魅力を保つことを願うばかりです。

次回は、ニースの周辺のカンヌやエズなどを含めて、コートダジュールの魅力を紹介します。

岡村聡_300

岡村 聡 (おかむら さとし)

シンガポールで資産運用のアドバイスを行う株式会社S&S investments代表取締役。 マッキンゼー&カンパニー、アドバンテッジ・パートナーズなどを経て、2010年11月に妻と2人で同社を設立。現在、資産運用に加えて、海外移住や海外不動産投資などのコンサルティングも行っている。著書に「世界の超富裕層だけがやっているお金の習慣」(KADOKAWA/中経出版)など。

連載コラム

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岡村聡 著
 
『世界の超富裕層だけがやっているお金の習慣』
KADOKAWA 1,540円(税込)
 
日本とシンガポールで、超富裕層を対象にファミリーオフィスを経営する著者が、「本当の富裕層」から学んだ、お金を使いこなし、豊かな人生をおくる術を解き明かす一冊。

岡村聡

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