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The Style Concierge

なぜファッションに気を使うのか?

服装はお金持ちの「記号」として作用している

では、同じお金がかかる服装であっても、派手な服を着る人が多いのはどうしてだろうか。それはほぼ100%、着る側ではなく、その服を見る側の能力にかかっている。

地味に見える服であっても、見る人が見れば「この服は高いだろうな」と想像できる。だが、こうした服装については一定割合の人が、地味で安そうな服としか判断しない。「高い服」というよりも「高そうに見える」服を着ていることが重要であるならば、分かる人が見ないと高級品と分からない商品にはデメリットがある。

ブランド物で完全武装している人について、多くの人は半ば呆れ顔で見ているが、これにも多少の合理性が存在していることについてお分かりいただけるだろう。

哲学の世界では、あるモノが、何かを示す象徴になっていることを「記号」と表現するが、その理屈で考えると、ブランド物というのはお金持ちの記号として機能していることが分かる。結果として、お金持ちでない人も、お金持ちの記号であるブランド物を身にまとうことで、周囲からそう見てもらえる可能性が出てくる。

お金持ちの記号として機能しているものは、このほかにも高級車や住所、食事の内容、子供の学校など様々なものがある。賢い人は、非常識にならない範囲でこの記号をうまく活用し、周囲に対して自身のプレゼンを行っている。

もっとも、この話は逆にも捉えることができる。分かる人にしか分からず、パッと見はごく普通の値段にしか見えないような商品は、究極の高級品であるともいえる。すべてこうした製品で通せるようになった人こそが、究極のお金持ちかもしれない。

加谷 珪一 (かや けいいち)

経済評論家。東北大学卒業後、投資ファンド運用会社などで企業評価や投資業務に従事。その後、コンサルティング会社を設立し代表に就任。マネーや経済に関するコラムなどの執筆を行う一方で、億単位の資産を運用する個人投資家の顔も持つ。著書「お金持ちの教科書」(阪急コミュニケーションズ)ほか多数。

連載コラム

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加谷珪一 著
 
「日本は小国になるが、それは絶望ではない」
KADOKAWA
単行本 1,430円
 
国際競争力の低下と少子高齢化が進む日本の未来とは?

将来の日本は小国になると予想し、小国になることは日本再生のチャンスであると唱える気鋭の経済評論家が、戦後最大の転換期を迎えた日本の新しい国家像を紐解く一冊。


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