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時にケチといわれる理由

資産が土地に偏っていると・・・

一方で、相当の資産家なはずなのに、みるからにケチな人もいる。こうした富裕層の多くは、資産の多くが収益性の低い土地に偏っている可能性が高い。

日本は欧米と異なり、富裕層の資産は土地に大きく偏っているという特徴がある。土地は都心の一等地なら高値で売れるだろうが、そうでないところの土地はそうそう簡単に売却できるものではない。

日本は東京などの都市部にすべての機能が集中しているので、土地をたくさん持っていても、それを活用してお金を稼ぐことは実は難しい。

しかも日本の相続税はかなり重い(最大50%超)ので、孫の代になると相続税を払うために土地をすべて手放す羽目になる。資産のほとんどが土地というお金持ちは、資産を持っていてもそれで十分に稼ぐことができないのである。

これが欧米のように資産の多くが金融資産になっていれば、株に投資したり、会社に出資したりと、いろいろな運用方法があり、資産からお金を生み出すことができる。
 
だが、有効活用しにくい土地しかない資産家にとっては、そこから得られる収入は小さく、固定資産税を支払ってしまうとほとんど残らないという状況が十分にありえるのだ。

そうなってしまうと、望むと望まざるとにかかわらず、質素な生活をしないと赤字になってしまうので、富裕層であるにもかかわらず、ケチケチした生活を送るハメになるのだ。

英国など階級制度が残る国に行くと、収益性の高くない土地しか残っていないかつての資産家層の末裔が、プライドを持ちながらも徹底して質素な生活を送っている姿を目にすることがある。

それはそれで、ポリシーのあるライフスタイルだが、庶民が持つ富裕層のイメージとはほど遠い。もしかすると、こうしたギャップが、富裕層はケチというイメージを増幅させているのかもしれない。

加谷 珪一 (かや けいいち)

経済評論家。東北大学卒業後、投資ファンド運用会社などで企業評価や投資業務に従事。その後、コンサルティング会社を設立し代表に就任。マネーや経済に関するコラムなどの執筆を行う一方で、億単位の資産を運用する個人投資家の顔も持つ。著書「お金持ちの教科書」(阪急コミュニケーションズ)ほか多数。

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