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これからの資産形成には
ファミリービジネスの感覚が必要 3/4

交渉力というのは日常生活の中で培われる

配偶者というのはこの世の中でもっとも信頼できる相手といってよい。この相手を説得できないようでは、独立したり転職しても、うまくいかない可能性が高いと考えた方がよいだろう。

実際に事業を始めるとなると、金銭的利害が絡んだ他人を説得し、自分の仲間として引き入れなければならない。ビジネスにおける交渉もシビアだ。こうした交渉を打開する能力がなければ、新しいプロジェクトを進めていくことは難しい。その意味では、嫁(夫)ブロックは、本人にとって最初のテストのようなものといってよいだろう。

配偶者からそのような相談があったら、とりあえず反対してみて、それでも納得できるような答が相手から返ってきた場合には、ポジティブに可能性を検討するべきだろう。こうしたやり取りができるのは、家族だけであり、これ以上の相談相手はいないはずである。

これは家族に限ったことではないが、こうした交渉事というのは日常的な言動の中からすでに始まっている。日常的なやり取りを通じて信頼感を得ていない人が、突然、こうした交渉で高い成果を得るというケースは少ない。これは夫婦であっても同じだろう。

大学卒業後、8年間公務員として働き、その後、人気ネットショップの経営者に転身した板羽宣人氏も家族の力をうまくビジネスに生かした一人である。

「事業をやりたい」と口にした板羽氏に対して、夫人は嫁ブロックすることなく、すぐに賛同してくれたそうだが、その一方で、「家族を路頭に迷わすことはしないで欲しい。だからしっかりと準備をして目標を決めよう」と提案してくれたそうである。板羽氏は、夫婦で協力して準備を進めることができたことが、今の成功につながっていると分析している。

筆者は多くの富裕層と接してきた経験があるが、富裕層の人は総じて夫婦のコミュニケーションが良好である。夫婦でお金のことを話し合うことができる環境は想像以上の効果をもたらすことになる。

加谷 珪一 (かや けいいち)

経済評論家。東北大学卒業後、投資ファンド運用会社などで企業評価や投資業務に従事。その後、コンサルティング会社を設立し代表に就任。マネーや経済に関するコラムなどの執筆を行う一方で、億単位の資産を運用する個人投資家の顔も持つ。著書「お金持ちの教科書」(阪急コミュニケーションズ)ほか多数。

連載コラム

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加谷珪一

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