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これからの資産形成には
ファミリービジネスの感覚が必要 2/4

夫婦の力が富をもたらした
ジャストシステムのケース

共働きの夫婦であれば、夫は夫で稼ぐ能力があり、妻は妻で稼ぐ能力を持っている。この2つの稼ぎを合算すれば、その分、世帯の収入は増えることになるわけだが、それだけでは不十分である。夫の稼ぎと妻の稼ぎに加えて、夫婦の稼ぎという第3の収益源を確立できれば、家計の収入は一気に3倍になる。

大きな資産を築いた実業家の中には、夫婦で起業したという人も多いのだが、これは第3の稼ぎ手がうまく顕在化したひとつの例なのである。日本語ワープロソフト「一太郎」を生み出したジャストシステム創業者の浮川和宣・初子夫妻のケースはその典型といってよいだろう。

2人は愛媛大学工学部の同級生で、卒業後はそれぞれ別の会社に就職していた。結婚後、初子氏は会社勤めを一旦やめるが、プログラマーとしての初子氏の才能を見込んだ和宣氏が起業を決意し、2人でジャストシステムを創業した。
 
ジャストシステムでは、開発責任者として初子氏が就任し、社長には和宣氏が就任した。浮川氏自身もエンジニア出身なので技術がよく分かる。しかも、開発責任者の初子氏は自分が才能を認めた自分の妻である。このコンビは絶大な効果を発揮し、ジャストシステムは一気に巨大企業に成長した。

和宣氏は、同社をここまで成長させることができたのだから、もともと実業家としての才能があったに違いない。だが妻の初子氏が開発を行うという体制でなければ、彼の経営者としての才覚がここまで開花したかどうかは分からない。一方、初子氏もプログラマーとして類い希な才能を持っていたのかもしれないが、会社員として開発を行ったり、単独で会社を設立していたら、彼女の才能はフルに発揮できなかったはずだ。

浮川夫妻は、「夫の仕事」+「妻の仕事」に加えて、さらに「夫婦の仕事」と言うプラスアルファを見つけ出すことができたことが、成功の要因となっている。たまたまその形がジャストシステムという会社の創業だったというだけの話である。

もちろんジャストシステムは非常に希なケースかもしれない。しかし、規模は小さくても、夫婦のアイデアをお金に変えることはどんな夫婦でも実現できるはずである。そのためには、浮川夫妻のような、お互いの能力をうまく引き出すセンスを持ち合わせていることが重要であり、こうした感覚を身につけるための第一歩が資産管理の共通化なのである。

加谷 珪一 (かや けいいち)

経済評論家。東北大学卒業後、投資ファンド運用会社などで企業評価や投資業務に従事。その後、コンサルティング会社を設立し代表に就任。マネーや経済に関するコラムなどの執筆を行う一方で、億単位の資産を運用する個人投資家の顔も持つ。著書「お金持ちの教科書」(阪急コミュニケーションズ)ほか多数。

連載コラム

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加谷珪一

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