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リッチ層にとっても気になる?エンゲル係数の急上昇

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日本の家計のエンゲル係数が上昇している。エンゲル係数は豊かさを示す指標として知られているが、最近は消費の価値観が多様化しており、エンゲル係数が高いことは必ずしも家計が苦しいことにはつながらない。だが、今回の日本におけるエンゲル係数の上昇はそうも言っていられない状況のようである。

エンゲル係数の上昇は必ずしも貧しさを示すものではないが・・・

総務省の家計調査によると、昨年12月の二人以上の世帯における消費支出は31万8254円で、同じ月の食料品支出は8万8327円だった。エンゲル係数を計算すると27.8%となる。一般的に12月は年末ということもあって食料品支出が増える傾向があり、エンゲル係数が増加することが多い。しかし2014年12月の数値は25.9%だったことを考えると、昨年はかなり上昇したと考えた方がよいだろう。

ちなみに2013年までは、エンゲル係数が25%を超える月はほとんどなかったが、2014年に入ってから25%を超える月が増え始めた。昨年5月以降は、毎月25%を超える状況が続く。

食料品は、生活を維持するための最低限度の支出水準というものがあるため、極端に節約することは不可能である。このため、家計支出に占める食料品の割合が増加している場合には、生活が苦しくなっているという一般的な解釈が成立することになる。

しかし、消費が多様化した先進国では、食に大金を使う人や、年収が高くても食生活が質素な人などもいるため、一概にエンゲル係数で評価することはできなくなる。このため、エンゲル係数を分析する際には、消費全体の状況も含めて考察する必要がある。

今回、エンゲル係数が上昇したのは、食費が増えたからではなく、支出総額が減っているからである。1年前の2014年における食料品支出は8万6191円と、2015年12月とほとんど変わっていない。しかし、2014年には支出総額が33万2363円だったので、食料品の割合は小さくなり、エンゲル係数も低く算出された。

日本における前年同月比(実質)でマイナス4.4%と大幅な減少となった。このところ、家計の実質消費支出は急激な勢いで減少しており、家計がかなり苦しい状態に陥っている。同時に、家計の消費支出に占める食費の割合を示すエンゲル係数も急上昇している。

日本における家計支出の絶対額はここ15年、一貫して減少が続いている。2000年における家計の平均支出は32万円弱だったが、2015年は29万円を切っている。支出全体を切り詰めているにもかかわらず食料品の支出が減っていないということは、もはや食料品はこれ以上切り詰められないところまできているのかもしれない。

加谷珪一

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