
10年ほど前から企業家が注目するようになった現代アートを「買う」選択。
アートの入り口として平面作品に親しみを持つ人は多いが、立体作品にも目を向けてみると、現代アートの新たな魅力や楽しみ方が見えてくる。
現在、東京と福岡に拠点を構える「gallery UG」は、豊かな色彩や空想性のある立体作品を多く扱うギャラリーで、代表をつとめる佐々木栄一朗氏は、2001年に東京・銀座にギャラリーを創設して以来、独自の価値観のもと、さまざまなアートプロジェクトを展開してきた現代アートの発信者である。
アート業界で40年以上のキャリアを持つ、佐々木氏のアート観やギャラリーの歩みを伺った。
平面を凌駕する存在感の大きさは立体作品ならではの醍醐味

ENRICH(以下E):gallery UGには、空想的でカラフルな立体作品が得意なアーティストが多く在籍しているイメージがありますが、ギャラリーで立体を中心に扱っている理由はあるのでしょうか?
佐々木:立体作品は360度どの角度からも鑑賞できる、視覚・触覚の両面から楽しめるアートです。平面を凌駕する存在感のある立体を展示できるのは非常に楽しいですし、立体を多く扱うギャラリーがまだ日本には少ないからこそ、その魅力を広く発信していきたいと考えています。
あとは、僕自身が「アートから受けるハッピーオーラ」を重視したいと思っていて、作品から力をもらえるような癒しの要素を大切にしています。

E:立体作品を中心に扱う日本のギャラリーが少ないのは何故なのでしょうか?
佐々木:立体アーティストって、実は一番不遇でして。アトリエを含めて広い制作場所を確保しないといけないですし、制作1つにかかる時間やコスト、ごみの量も多くて、制作環境も過酷です。
あとは、輸送費用がとにかく高くて。この前、マイアミでフェアに参加したときは、大小合わせて18点の作品を輸送するだけで片道600万円かかりましたから。これが平面のアーティストであれば100万円で済みます。
コスト面から海外で立体を発表できるギャラリーは多くないですし、扱ってもらえないことも多々あります。だからこそ良いアーティストが眠っていて、そこにスポットライトを当ててあげたいなと思っています。

E:2001年に銀座で開業し、2011年に日本橋に移転したのち、2020年9月には天王洲アイルに「gallery UG Tennoz」を、2025年9月には「gallery UG Fukuoka」をオープンされていますが、25年間という期間のなかで拠点を複数移している理由はあるのでしょうか。
佐々木:日本人の気質的には「1つの場所に踏みとどまることが良い」とされる傾向にありますが、アート業界では本拠(メッカ)をどんどん移転させていくことを怖がらない性質があると思っています。なので、スタートは銀座でしたが、2011年に当時現代アートのギャラリーが多く集まっていた日本橋に移転しました。また日本橋に移転してから10年ほど経つと、トレンドにも変化が見られるようになり、さらに場所を変えようと決めました。
E:天王洲と福岡、それぞれの立地を選んだ理由を教えてください。
佐々木:天王洲には、TERRADA ART COMPLEXⅡができるタイミングで入りました。もう1つ別の場所に出すのであれば、できるだけ商圏が遠い場所に拠点を構えることが望ましいなと考えて、一時期大阪にも出していましたが、テナントの建て直しで一度出なくてはいけなくなってしまって。そのタイミングで福岡のお話をいただいたので、大丸福岡天神店内にオープンしました。

E:gallery UG Tennozをオープンした2020年は、新型コロナウィルス流行による自粛ムードがあり、テナントにギャラリーが入らない状態だったとか。
佐々木:コロナの影響で4階建てのビルに3ギャラリーだけが1年くらいポツンと入っていたんですよ。それが逆に良くて、この場所イコールgallery UG Tennozだとも思ってもらえるようになりました。
あともう一つ、テナントが空いていたことで、「art TNZ(アート天王洲)」というイベントをアートフェア東京が寺田倉庫とタッグを組んで開催してくださったんです。アートフェア東京と同じだけの人がここに来場して。そのときにパーマネントのギャラリーとして入っているのが我々だけだったので、すごく良いインパクトになりましたね。

E:いまでは多くのギャラリーで賑わうこのビルが、一時期閑散としていたことに驚きです。流れに逆行したことが、結果として良い方向に繋がったのですね。
佐々木:結果的に逆張りになることがすごく良いことだと思うんですよ。みんながこっちのほうが良いと言っているから「じゃあそうしよう」と倣うのではなく、自分の選択がたまたまみんなと違っていること、それが後の結果として追い風をもたらすケースが多いなと思いますね。








