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東京から地方への強制分配が
都知事選によってあらためてクローズアップ

2013年度における東京都の名目県内総生産(GDP:国内総生産に相当)は93兆1280億円で、これは日本のGDPの約5分の1に相当する。東京の人口は日本全体の10分の1であるにもかかわらず、GDPは5分の1なので東京は並外れて儲けている計算になる。実際、東京都における1人あたりの県民所得は約450万円と他県に比べると非常に高い。ちなみに北海道は255万円、沖縄県は210万円であり、大阪府でも299万円と300万円を切っているのが実情だ。

東京には人がたくさん住んでいるので消費経済が活発というイメージがある。しかしGDPの支出面に着目してみると、個人消費は全体の約40%程度と実はそれほど多くない。日本全体では約60%が個人消費であることを考えると、東京の消費はかなり少ないように見えるのだが、この話は少しウラがある。個人消費と莫大な生産のギャップを埋めているのは実は他県への移出なのである。

このところ日本では外国人観光客の爆買いが話題となっており、これが日本の経済を支える柱のひとつとなりつつある。外国人による爆買いは、経済統計上は輸出とカウントされるのだが、同じことが東京と地方の間に起こっている。東京から他県へ製品やサービスを提供した分や、地方から東京にやってきた人がお金を落とした分はすべて移出とカウントされ、国にあてはめれば輸出と同じことになる。東京のGDPにおける移出が占める割合は約30%に達するのだが、日本という国をひとつの世界に見立てた場合、東京はかなりの輸出大国ということになるだろう。

基本的に地方自治体は、その地域で得られる税収をもとに運営するのが原理原則となっている。だが、日本の場合には、東京と地方の格差があまりにも大きいという問題があり、税収が少ない地域では自治体の維持が困難となってしまう。一方、東京にもお金をかけて対処すべき課題がたくさんあり、都民は犠牲を強いられているという解釈も成立する。今のところ東京から地方への再配分は東京の財政にそれほどの影響を与えているわけではないが、このまま地方への負担増が続けば、状況は変わってくる。今のところ東京は富裕層に優しい街だが、今後も東京が住みよい街であり続けるられるのかは微妙な状況となってきた。

加谷 珪一 (かや けいいち)

経済評論家。東北大学卒業後、投資ファンド運用会社などで企業評価や投資業務に従事。その後、コンサルティング会社を設立し代表に就任。マネーや経済に関するコラムなどの執筆を行う一方で、億単位の資産を運用する個人投資家の顔も持つ。著書「お金持ちの教科書」(阪急コミュニケーションズ)ほか多数。

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