50年前のシンガポール独立当初は、1シンガポールドル(SGD)=1マレーシアリンギット(MYR)でスタートしましたが、現在は中国を中心とした新興国からの資金流出やコモディティ価格の下落、さらには政府系ファンドの資金を巡るナジブ首相のスキャンダルにより、リンギットは売り込まれ現在1SGD=3MYRを上回って推移しています。
1人あたりGDPで見ても、2014年時点でシンガポールは56,000米ドルと、マレーシアの11,000米ドルの5倍以上、日本の36,000米ドルと比較しても1.5倍以上と、世界に冠たる経済大国となっています。今回の50周年の記念イベントに際して、PAPの苛烈な能力主義に基づいた統治があったからこそ、何もない小さな島国が世界に冠たる経済的繁栄を遂げたと、思いを新たにした国民も多かったのでしょう。
私たちのように、就労ビザを取得してシンガポールに滞在している外国人にとっても今回の選挙結果は安心できる内容でした。前回の選挙ではWPが、外国人流入による不動産を中心とした物価高騰で、長くシンガポールに暮らすローカルの生活がないがしろにされているという主張が軸に得票率を拡大したので、もし今回の選挙でさらにWPが躍進すると、外国人への就労ビザの付与が絞られる可能性があったからです。
今回のPAPの大勝により、しばらくはこれまで通り世界中からヒト・モノ・カネを集めて、経済的な成長を目指す路線が継続されるでしょう。これまでもこの連載で何度か、シンガポールは創業者ファミリーが未だ100%株主として君臨する、従業員500万人の株式会社のような国家だという話をしてきましたが、今回の50周年の記念イベントでもその思いを新たにしました。
偉大な創業者が亡くなりながらもこれまでの50年の歩みを振り返って、多くの従業員が創業家の2代目のリーダーを支持し、さらなるグローバル展開拡大を目指して再スタートを切ることになった社員総会という見方が、今回の50周年イベントにおけるシンガポールの国全体の雰囲気をよく表していると思います。