ENRICH(エンリッチ)

The Style Concierge

おとなしい人がお金持ちになれない本当の理由

健全な利益を追求できるコミュニティに入ることが重要

ビットコインに代表される仮想通貨に対するバッシングはその典型といってよいだろう。筆者はことさらに仮想通貨への投資を推奨するつもりはないが、もしビットコインが怪しいと思うのなら自分は投資をしなければよいだけの話である。ダメになると思っているのならなおさらで、むしろ手を出した人を冷笑していれば済む話だ。

ところが現実は逆で、ビットコインへの投資を積極的に行っている人にはバッシングまで行われており、メディアでも批判的な話ばかりである。ビットコイン投資を声高に批判している人の多くは、ビットコインについて100%怪しい資産だとは思っていない。むしろ、他人がビットコインで利益を上げて、相対的に自身との経済格差が拡大することを嫌っているのだ。

こうした人は、全員が何もせず貧乏なままであれば、自分は相対的に損をしないという、程度の低い利益を追求していることになる。

ここまで露骨ではないにせよ、周囲に対して過剰に同調し、大人しくしている人は、自分さえ攻撃されなければよいという、やはり消極的な利益のために行動を抑制している。自己主張を一切しなければ、それに伴う責任も回避できる。

他人を率先して攻撃していない分、積極的に足を引っ張る人よりはマシだが、個人的な利益のために行動しているという点では何も変わらない。身近な不条理に対してノーを言う勇気がない人は、やはり大きなお金を稼ぐことはできないと考えた方がよいだろう。

結局のところ、ほとんどの人が形こそ違っていても、個人的な利益のために行動している。資本主義社会では利益を追求することは悪いことではないので、そうであるならば、健全に大きな利益を追求した方がよい。皆がネガティブで小額な利益を追求するあまり、他人を妬んだり、足をひっぱたり、あるいは無責任な行動ばかり取っていては経済全体の利益を損ねてしまう(実際、こうしたカルチャーは、日本の経済的な苦境の原因のひとつとなっている)。

そうはいっても、ネガティブな利益を追求し、人の足を引っ張る人がすぐにいなくなるわけでもない。「全員が貧しくなればよい」という力学に巻き込まれないための最善の策は、そのような人たちとは極力関わらないことである。

少なくとも健全な利益を追求している人たちのコミュニティでは、無意味な足の引っ張り合いは存在しないし、有益な情報も共有しやすい。こうしたコミュニティをどれだけ早く見つけられるのかが、成功の鍵を握っているのだ。

加谷 珪一 (かや けいいち)

経済評論家。東北大学卒業後、投資ファンド運用会社などで企業評価や投資業務に従事。その後、コンサルティング会社を設立し代表に就任。マネーや経済に関するコラムなどの執筆を行う一方で、億単位の資産を運用する個人投資家の顔も持つ。著書「お金持ちの教科書」(阪急コミュニケーションズ)ほか多数。

連載コラム

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加谷珪一 著
 
「日本は小国になるが、それは絶望ではない」
KADOKAWA
単行本 1,430円
 
国際競争力の低下と少子高齢化が進む日本の未来とは?

将来の日本は小国になると予想し、小国になることは日本再生のチャンスであると唱える気鋭の経済評論家が、戦後最大の転換期を迎えた日本の新しい国家像を紐解く一冊。


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