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The Style Concierge

恋愛とビジネスは似ているという話は本当か?

正のスパイラルを作れるかどうか

少々、不謹慎だが、恋愛や結婚も含めて、すべてゲームと仮定すると話は簡単である。

基本的に成績を競うゲームというのは、たいていの場合、確率と機会の絶対値で成果が決まる。アポイント10件に対して1件注文が取れる営業マンAが、100件訪問すれば注文総数は10件となる。この営業マンがもっと成果を上げたければ、がんばって訪問件数を150件にすることで、確率論としては15件まで成績を伸ばすことができる。

一方、優秀な営業マンBは10件に対して1.5件注文が取れる。この営業マンは訪問件数が100件で15件の注文が取れるので、営業マンAよりも少ない労力で同じ成績となる。

もし営業マンの能力に変化がない場合、より多くの注文を取るためには、とにかく件数を増やすしかない。営業マンAも200件回れば営業マンBをはるかに上回る成績を残せるだろう。

先ほどの恋愛の話に当てはめれば、もし自分が不利な立場であると感じた場合には、まずは出会いの数全体を増やさなければ、恋人を作ることはできないという結論になる。

ここから先がさらに重要である。

先ほどは、営業マンが注文を取れる確率を一定と仮定したが、実はこの数字は状況によって変化する。もっとも顕著なのは経験値で、訪問営業の回数が増えれば増えるほど、ノウハウが貯まっていき、確率が上昇してくるのだ。

つまり数多く訪問をこなしている人は、経験値が上がっていき、同じ訪問件数でもより多くの注文を取れるようになっていく。最終的には掛け算で効いてくるので、成績に大きな差がついてしまうのだ。

結局のところ、数をこなした人にはかなわないので、成績を上げようと思ったら、とにかく場数を踏むしかない。そして大事なのは、その経験を法則化して、次に生かすことである。これができるようになると、倍々ゲームで成績が向上していく。

経済的に成功している人は、皆、この正のスパイラルをうまく自分の味方につけている。ビジネスであれ、投資であれ、恋愛であれ、これはまったく同一の法則といってよい。

*この記事は2020年2月に掲載されたものです

加谷 珪一 (かや けいいち)

経済評論家。東北大学卒業後、投資ファンド運用会社などで企業評価や投資業務に従事。その後、コンサルティング会社を設立し代表に就任。マネーや経済に関するコラムなどの執筆を行う一方で、億単位の資産を運用する個人投資家の顔も持つ。著書「お金持ちの教科書」(阪急コミュニケーションズ)ほか多数。

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