ENRICH(エンリッチ)

The Style Concierge

批判はするが文句は言わない

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お金持ちの人は、物事に対して批判的であることが少なくない。お金持ちの人は性格が良くないといった話が出てくるのは、お金持ちの人が批判的精神を持ち合わせていることと深く関係している。一方、お金に縁のない人は、批判ではなく文句をいう傾向が顕著である。お金持ちになりたければ、批判と文句をしっかり区別しなければならない。

学歴エリートほど陥りやすい?
 
批判と文句は似ているようだが、まったく異なる概念である。

批判というのは、相手の言動などの誤りを正したり、検討を加えたりする行為のことを指す。相手というのは必ずしも他人とは限らない。批判の対象が自分自身に向かうこともある。自分の行動の良くなかった点をしっかり認識し、それを改善するよう自身に促すというのは、批判的な精神を持っていればこそだ。

批判がしっかりとした批判であるためには、論旨が明確で、かつ、一定の枠組みに沿っている必要がある。一方、文句というのは、こうした条件には当てはらない。ただ気に入らないので、いろいろとケチをつけるといった行為に近いと考えてよいだろう。

仮に、文句の中に、何らかの論理性があったとしても、その論旨が毎回コロコロと変わるようでは、批判とは認定されない。つまり批判というものは、一定のロジックに沿った、相手に対する指摘ということになるわけだが、裏を返せば、自分自身がどう考えているのかということを説明する行為でもある。

したがって、批判するためには、自分自身の考えをしっかり持っている必要があるし、それができなければ、相手を批判する資格はない。それこそただの文句ということになるだろう。

批判と文句の違いを理解することは意外と大変である。むしろ頭がよい人ほど、批判と文句の区別を付けることが難しくなるケースがよく見られる。

どういうことかというと、下手に頭がよいと、自分が行っているのは正統な批判であって、文句ではないのだという理屈を自分自身の中で作り上げてしまう。つまり自己正当化である。

筆者は、会社の経営を通じて多くの人を見てきたが、高学歴で自身のことを頭がよいと考えている人ほど、こうしたジレンマに陥りがちであった。一旦、このフェーズに入ってしまうと、他人からそれを指摘されても、なかなか修正することができないものである。

では、批判と文句の違いはお金にどう関係するのだろうか。

加谷珪一

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