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タワマンはあまり好まない?

タワマンのリスクというのも結局は場所のリスク

先ほどマザーズ上場の社長はタワマンを好む傾向が強いというデータを紹介したが、マザーズ上場企業といっても千差万別であり、全員が百億円単位の資産家とは限らない。規模が小さく、成長途上で上場した企業の場合、社長だからといって、それほど多額の資産を持っているわけではない。超高級物件ではないにせよ、多少は体裁の良いタワマンを好む人が多いのも何となく想像できる話だろう。

では、お金持ちの人はタワマンが抱えるリスクについて検討はしないのだろうか。

実はこの話も、その土地が持つ資産価値と密接に関係している。一等地に建つ高級物件の場合、購入者の経済力が高いため、高い管理費や修繕積立金を徴収できる。このため、積立金不足という事態に陥る可能性は低い。仮にそうした事態に陥ったとしても、購入者に経済的な余力があるため、一時金として必要な金額を集めることも容易だ。
 
最悪のケースとして、管理がうまくいかず、大きなトラブルを抱えたとしても、一等地に建つ物件であれば対処法がある。それだけの土地に建つ物件であれば、売買や賃貸に対する旺盛な需要がある。管理体制さえ元に戻せば、不動産物件としての能力を発揮し続けることが可能だ。

こうした潜在力の高い物件をデベロッパーが見逃すはずがなく、必ずどこかの不動産会社や投資ファンドが買い付けに乗り出すだろう。したがって管理不全のまま放置される可能性は限りなく低いと考えてよい。

昨今、議論されているタワマンのリスクというのは、実はタワマンそのものリスクではなく、その物件の価値そのものについてのリスクと考えた方がよい。

逆に言うと、立地が悪い場所に建つタワマンが管理不全を起こした場合には、かなりやっかいな問題が発生することになる。そもそも購入者の経済力がそれほど高くないため追加の費用負担に応じられないケースが出てくる。ファンドが買収して再生するにしても、十分な需要が見込めないと、簡単には決断できない。

これは低層マンションでも同じことで、立地が悪い物件は、管理不全やスラム化のリスクが大きいのは当然のことである。タワマンの方が管理ノウハウが蓄積されていない分、不確実性が高いというだけで、タワマンに固有の問題ではない。

お金持ちの場合、あらゆる支出について投資マインドが働いているケースが多い。当然、住宅にも同じ価値観が適用されており、単なる好みで物件を選んでいるわけではないのだ。タワマンの比率が意外と低いというのも、投資マインドから得られた自然な結果である。

加谷 珪一 (かや けいいち)

経済評論家。東北大学卒業後、投資ファンド運用会社などで企業評価や投資業務に従事。その後、コンサルティング会社を設立し代表に就任。マネーや経済に関するコラムなどの執筆を行う一方で、億単位の資産を運用する個人投資家の顔も持つ。著書「お金持ちの教科書」(阪急コミュニケーションズ)ほか多数。

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