ENRICH(エンリッチ)

The Style Concierge

即断即決する理由

実は衝動買いも計算されている

例えば不動産投資で成功する人は、寝ても覚めても物件のことばかり考えている。どのようなエリアでどの程度の築年の物件が、いくらで出れば自分は飛び付くのか、夢に出ててくる位、何度も頭の中で咀嚼している。

場合によっては、その値段からさらにいくらまでなら値引きを要求できるのか、具体的な交渉のセリフまで思い浮かべているかもしれない。

こうした試行錯誤を常に実施しているので、条件にぴったりの案件が出てきた場合には、その場で購入を決断することができる。こうした行動は周囲の人から見れば、即断即決しているようにしか見えないのだが、彼等は普通の人からは想像もできないレベルで、何度も何度も入念に準備を行っているのだ。

時計や自動車の購入も同じである。

自分はどういった理由で、どのような商品が欲しいのか、お金持ちの人は誰よりも自分を理解している。その条件に合致した商品があれば、その場で買うだけだ。

ではお金持ちの人に衝動買いはないのだろうか。

これについても厳密な意味での衝動買いは存在しないと考えてよいだろう。お金持ちはおそらく衝動買いについても、頭の中でシミュレーションしている可能性が高い。自身の魂を揺さぶる商品があれば、一定範囲内の金額で即座に買うという心の準備が出来ている。

これも外部から見れば、右脳に従って一気に衝動買いしたように見えるだろう。

お金持ちというのは徹底して合理的であり、そうであればこそ平均的な人物とは比較にならない成功を収めることが出来ている。徹頭徹尾、合理主義という点ではすこしつまらない人生に思えるかもしれないが、そんなことはない。ビジネスや投資にはリスクがつきものであり、そのリスクから生じるスリルは到底、他のものでは代替できないからである。

*この記事は2018年10月に掲載されたものです

加谷 珪一 (かや けいいち)

経済評論家。東北大学卒業後、投資ファンド運用会社などで企業評価や投資業務に従事。その後、コンサルティング会社を設立し代表に就任。マネーや経済に関するコラムなどの執筆を行う一方で、億単位の資産を運用する個人投資家の顔も持つ。著書「お金持ちの教科書」(阪急コミュニケーションズ)ほか多数。

連載コラム

tomobata_
加谷珪一 著
 
「共働き夫婦のためのお金持ちの教科書 30年後もお金に困らない!」
CCCメディアハウス 1,404円
 
マイホーム、貯蓄と投資、保険、子どもの教育費、親の介護と相続…大きく増やすために、大きく減らさないために、今できることとは?共働き夫婦なら絶対に知っておきたい57の基礎知識。

加谷珪一

Return Top