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The Style Concierge

1000万は30万円と同じこと

資産が増えてきたら、逆に消費を見直すべき

冒頭で述べた「1000万円を稼いでも30万円を稼いだとカウントする」という話は、上記を象徴的に示したものである。日本では、固定資産を含むすべての資産を平均した場合、3%程度の運用利回りで回っている。1000万円の資産があれば、理論上、毎年30万円のフロー(しかも不労所得)が得られる。

つまり1000万円を稼いだ時、30万円しか稼いでいないというという感覚を持つことができれば、資産を減らすことなく、毎年、運用収益を得られる体制を確立できるわけだ。

日本は低金利なのでこの程度の利回りにしかならないが、海外の資産にも投資してよいなら、この利回りはさらに高くなる。ほぼ100%安全な資産である米国債でも3%の利回りがあることを考えると、不動産や株式など、もう少しリスクを取ればリターンはさらに大きくなる。

もし1億円の資産を3%で運用できた場合、年間300万円の収入となる。課税分の20%を差し引くと240万円が手元に残ることになるわけだが、これこそが、一切の制約なく消費できるお金である。飲み食いしようが、道路に撒こうが本人の自由である。

予想外に資産を構築できた人は、たいていの場合、後になって「知らない間に資産が膨れあがっていた」と感想を述べている。こうした人たちは、投資による収益が増えても、生活水準をあまり変えず、投資で得られた収益を積極的に再投資してきた可能性が高い。

毎年の資産拡大額はそれほどでもないが、複利で効いてくるので、5年、10年というレベルになると目に見えて資産額が増えてくる。10年、15年が経過すると「知らない間に資産が大きくなっていた」という状況になっているのだ。

せっかく資産が増えてきて、投資収益が拡大しても、その多くが消費に回ってしまっていては、従来までのプチ・リッチのフェーズとほとんど変わりはない。万が一、ビジネスの不調などで年収が大きく減ってしまった場合には、ストックを取り崩す可能性もある。

高収入の人はアグレッシブな人も多いので、また稼げば大丈夫と思いがちである。だが資産額が増えるにしたがって、失った資産を取り戻すことは難しくなる。ある程度、まとまった資産ができて、経済的な余裕が増えてきたら、むしろ消費を抑制するといった工夫をした方がよい。

これができるかできないかで、一般的なリッチ層で終わってしまうのか、本当の資産家層にシフトできるのかが決まるのだ。

加谷 珪一 (かや けいいち)

経済評論家。東北大学卒業後、投資ファンド運用会社などで企業評価や投資業務に従事。その後、コンサルティング会社を設立し代表に就任。マネーや経済に関するコラムなどの執筆を行う一方で、億単位の資産を運用する個人投資家の顔も持つ。著書「お金持ちの教科書」(阪急コミュニケーションズ)ほか多数。

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