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The Style Concierge

批判はするが文句は言わない

公正さを求める気持ちがビジネスや投資につながる

お金を稼ぐためには、ビジネスや投資に積極的に取り組む必要があるが、ビジネスや投資においてもっとも重要なのは公正さである。ビジネスや投資は、公正さが担保されなければ、その価値が十分に生かされないし、自身の能力を100%発揮することもできない。

したがって、本気でお金儲けをしようと思うのであれば、ビジネスや投資における不公正な状況については、たとえ相手から嫌われても、勇気を持って批判する精神が必要となる。
 
確かに、ズル賢く立ち回り、目の前の利益を優先すれば、小銭は稼げるかもしれない。しかし、もっと大きなレベルの資産を形成するということになると、こうしたスタンスではとても太刀打ちできないことは明白である。

起業家の中には、社会の不条理なシステムを、自身の製品やサービスで改革したいという思いから事業をスタートさせる人も多い。フェアではないことをしっかりと指摘し、批判するという精神は、最終的にはその人に大きな富をもたらすという好例である。

一方、お金に縁のない人は、批判ではなく不満ばかりとなる。

上司が自分を評価してくれない、取引先がムチャを言う、給料が安いなど、これらの多くは批判ではなくすべて不満であり文句ということになる。

もし、本当に自身に能力があり、上司が適切にそれを評価しないのであれば、上司に対して正しい評価を要求するか、そうでなければ、別の仕事を探すしか本質的な解決策はない。不満を言ったところで状況が好転するわけではないのだ。

不満だけになってしまう人に共通しているのは、過大な自己愛である。

自分が好きで好きでたまらないと、自分を満足させてくれない相手に不満を持ってしまう。人間は感情を持った生き物なので、好き嫌いがあるのは当たり前であり、これは自分自身に対する感情という意味でもまったく同じである。どんなに立派な人でも、自分に対する過大な愛情は持っているが、これがあまりにも強いと合理的な判断ができなくなってしまう。

相手に不満を持ちやすい体質の人は、自分自身に対する気持ちがどうなっているのか、一度、問い直してみた方がよいだろう。

自分自身について、ある程度、客観視できるようになれば、相手に対しても、同じように客観視できるようになる。そうなれば、論理に一貫性が出てくるので、文句ではなく、批判ができるようになってくるはずだ。

*この記事は2017年11月に掲載されたものです

 

加谷 珪一 (かや けいいち)

経済評論家。東北大学卒業後、投資ファンド運用会社などで企業評価や投資業務に従事。その後、コンサルティング会社を設立し代表に就任。マネーや経済に関するコラムなどの執筆を行う一方で、億単位の資産を運用する個人投資家の顔も持つ。著書「お金持ちの教科書」(阪急コミュニケーションズ)ほか多数。

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