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金利が持つパワーを知っている

借金はお金を借りるためにするのではない

お金持ちはチャンスが到来したと判断できる時は、躊躇せずにローンを組んで不動産などに投資をする。彼らがわざわざ金利を払ってローンを組んだのは、金利というコストを払っても、時間を買いたかったからである。

投資のチャンスというのはそうそう簡単に訪れるものではない。来年にはそのチャンスが消滅している可能性が高いのだ。銀行は金利というコストを払えばお金を貸してくれる。言い換えれば、銀行というのは、お金を自由に使う権利を融資先に提供することで対価を得るビジネスということになる。

お金持ちは銀行から時間を買い、その時間を最大限活用して資産を増やす。つまり借金というのはお金そのものよりも時間を買っているというニュアンスが強いことになる。これに気付いた人は、より上手に借金ができる。一方、お金を借りるという感覚から抜けきれない人は、借金が下手なままである。

インフレの時には借金が有利だという話を聞いたことがあると思うが、これも同じ理屈で説明することができる。

インフレ期待があるということは、将来、物価が上がると多くの人が予想していることを意味している。したがってインフレ期待がある時に、不動産や株を買っておけば、将来、実際に値段が上がった時に利益を享受することができる。
 
今、明確なインフレ期待が存在した場合、現金を持っている人の多くは、株や不動産を買うだろう。しかし、現金がない場合には、すぐに購入することができない。お金が貯まるまで待っていては、インフレが進んでしまってチャンスを逃してしまう可能性がある。
 
ここで金利を払ってお金を借りてくれば、すぐにでも投資を実行できる。つまり、その投資家は、金利というコストを払って時間を買い、後ではなく、今すぐに投資を実行したと解釈できる。

多くの人は、今、手元にお金がないからという理由だけで、銀行からお金を借りてしまう。しかし、金利を払うというのは時間を買う行為だとの認識があれば、ローンの意味も大きく変わってくる。これこそが金利が持つパワーである。

*この記事は2017年10月に掲載されたものです

加谷 珪一 (かや けいいち)

経済評論家。東北大学卒業後、投資ファンド運用会社などで企業評価や投資業務に従事。その後、コンサルティング会社を設立し代表に就任。マネーや経済に関するコラムなどの執筆を行う一方で、億単位の資産を運用する個人投資家の顔も持つ。著書「お金持ちの教科書」(阪急コミュニケーションズ)ほか多数。

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