ENRICH(エンリッチ)

The Style Concierge

「メンタルの強弱」は自分が決めること

“必要”だと思うことを追求すれば
自分なりの“強メンタル”は育つ

結局のところ、私はメンタルの強弱は他人がどうこう言おうとも「本人次第」だと考えています。自分自身が「強い」と思うならそれで構いませんし、「弱い」と捉えるのも自由です。

同じ人物・行動であっても多様な捉え方もできます。例えば、毎回良いところまで行くもプレゼンが通らない部下がいるとします。彼を「ツメが甘い弱メンタル」かもしれませんし、見方を変えると「何度くじけても立ち上がる強メンタル」と評することもできます。つまり、周囲の評価はあてになりませんし、結局は自分自身が「どうありたいのか」を最優先に考え己と向き合うことが、メンタルを育てていきます。

また、「弱い=リーダーに適していない」とも断言はできません。牽引力のある右腕がいれば問題ないでしょうから。一般的に「メンタルが強い」というと、「プレッシャーをはねのける」「ストレスに負けない」といったイメージですが、本質的なところは「自分が求めていること・求められていること、理想とするところに一歩ずつ近づき、実現するための必要なスキルを身に着けていること」だからです。表層的なメンタルの強さを追い求めるばかりでは、それこそ虚勢を張り仲間を退け、気が付けば孤立無援になりかねませんし、弱さを吐露できず自身を追い込んでしまう危険すら生じます。

メンタルを鍛えたいのであれば、パーフェクトな自分を思い描くのではなく、「何を変えたいのか」を具体化し、改善のための行動に移していくことです。例えば、あがり症に困っているなら、それを克服するだけで自信がつき、他でも何かできないかとポジティブのサイクルが周り始めるかもしれません。

人間ですから、心が折れそうなこともあるでしょう。そんな時は、「昨日の自分よりも今日はよくなろう」と、自分の心の中にあるコーチを味方に置き、長い目で自分自身の成長を信じることです。他人と比較するなど、他者評価ばかりに目を向けると自信を失いやすくなるので注意しないといけません。

また、自分に必要なことを身に着けたいときは、座右の銘を毎日書くことをお勧めします。あるプロ野球選手から「色紙にサインと一緒に書くと、その銘を書くたびに自分にフィードバックされます」と聞きました。思えば、私も昔は単語を暗記するのに何度も紙に書いていましたが、それと同じことです。同じ言葉や文章を書き続けると脳が刺激され、銘に刻まれている思考の回路を脳内で繰り返すことにより強化されていきます。

*この記事は2018年6月に掲載されたものです

高畑好秀

高畑 好秀 (たかはた・よしひで)

メンタルトレーナー。1968年、広島県生まれ。早稲田大学人間科学部スポーツ科学科スポーツ心理学専攻卒。日本心理学会認定心理士資格を取得。同大学運動心理学研修生終了後、数多くのプロ野球、Jリーグ、Vリーグ、プロゴルファーなどのプロスポーツ選手やオリンピック選手などのメンタルトレーニングの指導を行なう。著書に『一流だけが知っている自分の限界を超える方法』(中経出版)など。スポーツ、ビジネスのメンタルに関する著書は70冊を超える。

連載コラム

高畑好秀氏著書
高畑好秀 著
 
一流だけが知っている自分の限界を超える方法
KADOKAWA/中経出版 1,404円

 
名だたるトップアスリートが指名するメンタルトレーナーである著者が、彼らと真剣に向き合う中で見出した「人間は本来負けたがっている」というオリジナルのスポーツ心理学をベースに、「勝ち」への執着を捨て、限界突破のための「負け」を知る究極の方法を説く。
 
高畑好秀 公式サイト: www.takahata-mental.com

高畑好秀

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