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インタビュー|加谷珪一
成功者の法則 1/3回

観察力を磨くことがブレイクスルーへの第一歩

観察力に優れているというのも、彼らの共通項。チャンスをつかめる人は、他人に飛び込むのが上手、手繰り寄せられるという面もありますが、全員がそうではありません。むしろ、チャンスのつかみ方を理解しているという印象を受けました。

例えば、自分より立場が上の方とコミュニケーションを取るとチャンスが巡ってくる確率は高くなります。ですが、むやみに知り合いになれるかというと、それはありません。縁をつなぐためには別の形で上の人に求められるニーズが必要になりますが、そこを冷静に見つけ出せることができれば、チャンスをつかめるということです。

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私の知人がそうで、彼はあるオーナー社長に引き抜かれて、いまは某会社のトップを任されています。

きっかけは、息子さんの遊び相手を頼まれたこと。表向きは「バカ息子と付き合ってほしい」ということですが、その裏には「世間知らずのままだとマズイので、一般のサラリーマン社会を教えてほしい」という、真のニーズがあったと推察できます。彼はそこを感じ取り「良い気になるな」と教育したそうですが、社長も彼が意図を汲んでいるとわかり、それが親交を深め、ヘッドハンティングへとつながっていくわけです。ですから、下の立場だからといってニーズがないわけでもなく、求められることを見つけられればチャンスを手繰り寄せられます。そこで求められるのが、観察力だということ。この場合も呼び出されたから漫然と付き合うのではなく、社長と息子さん、さらには家庭や会社の状況、課題を冷静に観察・分析したからこそ、適切な振る舞いができたとのだと思います。

こういった鋭い観察力は、天性の才能ではなく、会社の業務などトレーニングを通じて身につけることができます。

またしても、私のサラリーマン時代のエピソードですが、ある上司から「いまから30分で50社のリストを作れ」と命じられたことがありました。当時は凡百の会社員だった私は言われるがままに作るのですが、30分では到底間に合いません。口答えしたところ「何でもいい、雑でもいいから」とのこと。必死で作成したところ、まさに30分たったころに部長から電話が入り、上司はそのリストを持って消えました。その後、部長に説明した上でお墨付きを得てリストを作りなおしたのですが、これは部長が頼みごとをしたら1時間も待てないという性格を上司が知っていたからこそ。中身が完璧ではなくとも、説明すれば安心するということを、日ごろから観察して熟知していたのです。業務上のニーズにも応えているわけですから、この上司が出世しないわけがありません。覚えも良くなりますし、ドラフトの時点で説明して指示を仰ぐわけですから、ムダな業務を減らすこともできます。つまり、この上司は普段の観察や情報収集を通じて、戦略的に振る舞い、自分の価値を最大化させて、高い評価に導いていたことになります。決してカン頼りではないのです。

ーー富裕層や成功者には共通項がある。読者の皆さんも思い当たるところがあるはずだ。合理的な言動や戦略的な人付き合いなど、様々な要素が絡み合い、チャンスをつかんだに違いない。だからこそ、加谷氏の言葉に共感を覚えるのではないだろうか。

続2/3回は、富裕層を4タイプに分類した上で、それぞれの特徴やビジネス、資産に対する考え方を考察していく。 

→2/3回へ

加谷 珪一 (かや けいいち)

経済評論家。東北大学卒業後、投資ファンド運用会社などで企業評価や投資業務に従事。その後、コンサルティング会社を設立し代表に就任。マネーや経済に関するコラムなどの執筆を行う一方で、億単位の資産を運用する個人投資家の顔も持つ。著書「お金持ちの教科書」(阪急コミュニケーションズ)ほか多数。

連載コラム

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エンリッチ編集部

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