ENRICH(エンリッチ)

The Style Concierge

カーネギー(USスチール創業者)

経験を積むのに早すぎるということはない

成功した実業家の中にはカーネギーのように、大成功のきっかけとなった事業をスタートした時点ですでに豊富な資金を持っていたというケースがよく見られる。

旅行代理店大手HIS創業者の澤田秀雄氏は、ドイツ留学中にドイツにやってくる日本ビジネスマンを現地のレストランや観劇に案内する一種のツアーを企画し、かなりの金額を稼いでいた。しかも、そのお金を株式投資に回してさらに大きな利益を上げ、帰国する時にはかなりのまとまった資金を手にしていたという。このため、HISを創業するにあたって借金などをする必要がなかったそうである。

日本電産創業者の永守重信氏も同じである。永守氏は高校時代から小中学生向けの学習塾を開き、かなりのお金を稼いでいたという。澤田氏と同様、株式投資でも大成功し、サラリーマンを始める時にはちょっとした資産家となっていた。

カーネギーや澤田氏、永守氏の例から分かることは、お金儲けの勉強や実践は、いつから始めてもよいということである。澤田氏は大学卒業後すぐに起業したが、永守氏は一度サラリーマンを経験している。カーネギーはサラリーマンをやりながら徐々に実業家になっていったという感じだ。

最初に会社務めを行い、訓練を積んでから実業の世界に入るのは一般的なパターンかもしれないが、この順番は逆でもよいし、同時平行でもよい。こうした経験を積むチャンスがあればよいのであって、順番が問題なのではない。

カーネギーの読書好きは生涯続いたという。彼を訪問した人の多くが、家の書斎で本を一心不乱に読んでいる姿を目撃している。「もし生まれ変わったら図書係になりたい」といった彼の発言は本物かもしれない。またカーネギーは生活が地味なことでも有名であった。

世界一のお金持ちであるにもかかわらず一隻のヨットも持たず、夫人も社交界に出ることはめったになかったそうである。また彼の娘もごく普通の人物と結婚している。このあたりの雰囲気は、オマハの賢人とも呼ばれる現代の大富豪であるウォーレン・バフェット氏とも通じるところがある。お金について淡泊なことが財産を引き寄せるという法則はやはりかなりのケースで当てはまっているようだ。

*この記事は2017年2月に掲載されたものです

加谷 珪一 (かや けいいち)

経済評論家。東北大学卒業後、投資ファンド運用会社などで企業評価や投資業務に従事。その後、コンサルティング会社を設立し代表に就任。マネーや経済に関するコラムなどの執筆を行う一方で、億単位の資産を運用する個人投資家の顔も持つ。著書「お金持ちの教科書」(阪急コミュニケーションズ)ほか多数。

連載コラム

tomobata_
加谷珪一 著
 
「共働き夫婦のためのお金持ちの教科書 30年後もお金に困らない!」
CCCメディアハウス 1,404円
 
マイホーム、貯蓄と投資、保険、子どもの教育費、親の介護と相続…大きく増やすために、大きく減らさないために、今できることとは?共働き夫婦なら絶対に知っておきたい57の基礎知識。

加谷珪一

Return Top