2. 賠償すべき金額とその考え方
検討のステップは以下のとおりです。
・契約書の確認
損害賠償請求を受けた場合の対応として、まずは契約書に規定された売主を保護するための諸条項がどこまで機能するかを確認することが重要です。それらが、賠償範囲をどの程度制限しているかを十分に確認することは、売主にとって不可欠なプロセスといえます。
具体的には、契約上の賠償上限(キャップ)や請求期間の制限に加え、補償手段を契約内の定めに限定することで民法上の一般原則(債務不履行責任)を排除する「救済手段の限定」が合意されているかを十分に確認する必要があります。
あわせて、売主への請求に先立って保険を優先させる「保険優先処理」や、買主側がいたずらに損害を拡大させた場合の負担を定めた「損害軽減義務」についても、その適用可能性を検討すべきです。
また、「請求額の下限条項」が設けられている場合には、累計額が一定に達した際に初めて賠償義務が生じるのかといった、発動条件を十分に確認することも重要です。
・請求根拠の確認
次に請求の法的根拠に基づいた具体的な検討へと移ります。
実際の賠償額は、株式譲渡契約に基づく「補償」か、あるいは契約に定めのない「民法」上の請求かによって、その算定の軸足が大きく変わります。前者の契約に基づく請求であれば、条項の解釈が議論の中心となり、損害の定義に「弁護士費用」が含まれるか、あるいは別法人である「対象会社」の損害を買主自身の損害とみなす規定があるかといった点がよく争点となります。
対して、後者の民法に基づく請求では、損害と違反事実との間の因果関係を、重大な表明保証違反から軽微なコベナンツ(誓約事項)違反まで、その性質に照らして個別に吟味していくことになります。
損害を金銭評価する局面では、民法上の「差額説」を根拠に、裁判例において、大要3つの考え方が見られます。
① 譲渡価格そのものとするもの(ただし、株式の客観的価値分は除く)
この場合は客観的価値の定義が重大な論点となり、必ずしも処分価格とは一致しない点に注意が必要です。
② 想定譲渡価額との差を損害とするもの
「違反事実を知っていれば合意したであろう価格」との差、いわゆる高値掴みの解消を目的とした「想定譲渡価格」との乖離を重視するアプローチも有力です。この手法では、価格算定の基礎において、前提事実の相違が結果にどれほどの差分を生じさせるかという立証が極めて重要となります。
③対象会社に生じた損害とするもの
買主とは別人格である「対象会社に生じた損害」をベースとする考え方もあります。これを株主である買主自身の損害として評価できるかが論点となります。







