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The Style Concierge

次々と登場する新次元の中抜きビジネスは、個人にとって大きなビジネスチャンス

外国人観光者が増加。安価な宿泊先へのニーズは大きい

最近、ネットを使った民泊がちょっとしたブームになっている。きっかけになったのは、米国のベンチャー企業が手がけるAirbnbというサービスだ。

宿泊したい人と、自宅を宿泊施設として提供したい人をインターネットで仲介するというもので、2008年に米国でサービスを開始して以降、あっという間に世界に普及した。現在では192カ国で80万件以上の宿を仲介している。

サラリーマンの年収を超える人も

これまでは、ネット事情に詳しい一部の人が、こうしたサービスに登録し、ひっそりと自宅を提供していただけだった。だが昨年、同社の日本法人が設立されてからは状況が一変。自宅を民泊に提供する人が急増し、今では1万件以上の家が同社サイトに登録されている。価格帯も1泊数千円のレベルから数万円まで様々だ。

登録しているホストの中には、家族総出で本格的にサービスを展開している人や、Airbnb専用に投資用マンションを用意している人もいる。東京タワーや浅草など、著名な観光地の近辺は外国人のニーズが強く、高い宿泊料を取ることができるので、中にはサラリーマンの収入をはるかに超える金額を稼ぐケースも出てきているという。

実はこうした行為は日本の旅館業法に抵触する恐れがある。対価を得て観光客を宿泊させるには、必要な装備を設置した上で自治体から営業許可を取る必要があるが、当然のことながら旅館業の登録をしているホストなどいない。一般家庭がプライベートな形で対価を得たとしても、それが継続的に繰り返されれば、旅館業と見なされる可能性が高いだろう。利用形態によっては不動産関連業法にも抵触するはずだ。

だが、外国人観光客が急増しているにも関わらず、安価な宿泊先が少ないという現実的な課題が存在することや、こうしたサービスがグローバル・スタンダードとなりつつあることから、法律の議論よりも普及が進んでしまっているのが現実のようである。

筆者は法律の枠組みを超えた、こうした新しいサービスについて一方的に是認するつもりはない。だがAirbnbのような新しいネットサービスは、これからも次々と登場してくる可能性が高く、既存の法的な枠組みや商習慣では、抜本的な対処は極めて難しいと考えた方がよいだろう。

こうしたネットを使った新しいサービスは、競合する既存企業にとっては脅威かもしれないが、一方で、ネットを活用できる個人にとっては、大きなビジネスチャンスでもある。

加谷珪一

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