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取引所社長の逮捕で、ビットコインに対する規制強化の動き?

ビットコインは金のような値動きに?

今後、ビットコインがさらに普及することになった場合、私たちはその存在についてどのように考えればよいのだろうか。債務危機で大混乱となっているギリシャでは、多くの資産家が現金をビットコインに変えて資産を保全しているという。

金融システムが健全な国であれば、安全資産としてビットコインを利用するというニーズはないかもしれないが、外貨運用の一貫としてビットコインへの投資を考える人は増えてくるだろう。ビットコインは一時、投機の対象となり、マウントゴックスの破たん直前には1ビットコイン=1000ドルを超える水準まで価格が上昇していた。

マウントゴックス破たん前後から価格は急落し、一時は250ドルを切っていたが、最近は270ドル前後で徐々に安定した値動きとなりつつある。

ビットコインがどこの国家の統制も受けないということになると、2つのあり方が考えられる。ひとつはドルなど基軸通貨に連動する形で価格が安定していくというパターン。もうひとつは、金のように基軸通貨に対する信用度合いのバロメーターとして機能するというパターンである。

金価格は、基軸通貨ドルに対する信用度合いを示すものと市場では認識されている。ドルの流通量が過度に増え、ドルに対する信用が低下すると金価格は上昇し、逆にドルに対する信用度が高まると金価格は下落する。現在は全世界的なドル高局面であり、ドルに対する信用度が上がっていることから、金価格は大幅に下落している。

シーソー

ビットコインも似たような値動きとなるのであれば、投資対象としてそれなりに魅力的な存在となるかもしれない。

現在、政府内部ではビットコイン取引所を登録制や免許制にする案などが浮上している。証券取引所などと同様、一定範囲で当局の監督を受けた方が、健全な市場の育成につながり、投資する環境もより整ってくるだろう。

一方、メディアの論調などを見ると、ビットコインについて得体の知れないものとして、その存在について否定的に考える人も少なくないようである。同じ規制でも、その普及を妨げるようなものとなってしまった場合には、残念ながら日本は金融分野のガラパゴス化がさらに進むことになってしまうかもしれない。

現在、ビットコインに対して積極的なスタンスなのは、ドイツや米国など「強国」である。一方ビットコインに対して否定的なスタンスを取っているのは、中国やロシアなど、金融システムが脆弱な国家である。

自国の金融市場に対して自信があるならば、ビットコインのような新しい仕組みは、うまく自国通貨圏に取り込んだ方が、政治的にも経済的にも有利である。ビットコインの普及とそれに対する政府の対応は、それぞれの国の「強さ」のバロメータともいえる。

日本の規制に関する議論が、ロシアや中国のような否定的なスタンスで進まないことを祈りたいものである。

加谷 珪一 (かや けいいち)

経済評論家。東北大学卒業後、投資ファンド運用会社などで企業評価や投資業務に従事。その後、コンサルティング会社を設立し代表に就任。マネーや経済に関するコラムなどの執筆を行う一方で、億単位の資産を運用する個人投資家の顔も持つ。著書「お金持ちの教科書」(阪急コミュニケーションズ)ほか多数。

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